土星探査機(読み)どせいたんさき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「土星探査機」の意味・わかりやすい解説

土星探査機
どせいたんさき

土星とその衛星、およびそれらの周辺環境を探査する宇宙機。

 土星は太陽系のなかで2番目に大きな惑星である。土星の内部には鉄やニッケルなどからなる中心核があるが、主要成分がガスであるため巨大ガス惑星(96.3%が水素分子、3.25%がヘリウム分子)に分類される。土星は恒常的な環(わ)をもち、九つが主要なリング状、三つが不定的な円弧である。これらはほとんどが氷の小片であり、岩石デブリ宇宙塵(じん)も含まれる。確認されている限りでは62個の衛星をもち、うち53個には固有名詞がつけられている。

 土星の観測は1973年にアメリカによって打ち上げられたパイオニア11号により、初めて成功した。翌1974年には木星近傍を通過しながら多くの写真を撮ったのち、スイングバイを行って1979年に土星まで2万1000キロメートルの距離に接近してE環、F環、G環を発見した。パイオニア11号は電力の低下から1995年に観測を停止し、その後、海王星軌道を通過して太陽系を離脱する軌道を進んだ。1977年に、アメリカによって打ち上げられた双子の外惑星探査機ボイジャー1号および2号は、木星、土星、天王星、海王星、冥王(めいおう)星が同じ方向に並ぶタイミングをねらって打ち上げられた。1号は木星と土星の観測とそれらの衛星や取り巻く環の観測を行った。2号は土星でスイングバイを行って天王星と海王星に向かった。2017年時点でボイジャー1号、2号ともにすでに太陽系を離脱し、地球から190億キロメートルあまり離れた星間空間を飛行している。ボイジャーには「地球の音」(The sounds of Earth)というタイトルの金めっきが施された銅板製レコードが取り付けられており、さまざまな音や音楽、写真などが収録されている。このレコードは、他の恒星系の惑星に住むと思われる地球外知的生命体によって発見され、メッセージが解読されることを期待して搭載された。

 1997年にアメリカが打ち上げた土星探査機カッシーニは、2004年から土星周回軌道に入り、新たに七つの衛星を発見した。カッシーニに搭載されたESA(イーサ)(ヨーロッパ宇宙機関)のタイタン着陸船ホイヘンスは、衛星タイタンに着陸して大気成分や大気の動態観測を行った。2017年9月ごろにカッシーニ本体を土星の大気圏に突入させて運用を終了する予定である。この方法によって、探査機に付着している可能性がある微生物などが土星の衛星を汚染するのを防ぐことができる。

[森山 隆 2017年6月20日]


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