土砂災害防止法(読み)どしゃさいがいぼうしほう

共同通信ニュース用語解説 「土砂災害防止法」の解説

土砂災害防止法

広島県で1999年に多くの人が死亡した災害をきっかけに制定された。都道府県は、災害が起きると住民生命に危険が及ぶ恐れがある地域を警戒区域、さらに危険な場所を特別警戒区域に指定する。警戒区域では市町村ハザードマップ作成など避難体制を整備。特別警戒区域では土地利用一定規制がかかり、建物の移転勧告もできる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「土砂災害防止法」の意味・わかりやすい解説

土砂災害防止法
どしゃさいがいぼうしほう

土砂災害の危険周知や避難体制の整備を目的とする法律。1999年(平成11)、広島市を中心に死者・行方不明者32人を出した豪雨・土砂災害をきっかけに2001年(平成13)に施行された。正式名称は「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」(平成12年法律第57号)。土砂災害には、山の斜面傾斜が30度以上で、自然崩壊する「急傾斜地の崩壊(崖(がけ)崩れ)」、山腹が崩れて土や石などが流れ出す「土石流」、地下水などが原因で土地の一部が滑る「地滑り」、の3タイプがある。都道府県は土砂災害防止法に基づき、この3タイプの土砂災害の危険地域を「警戒区域」に指定。指定された区域の自治体は避難計画やハザードマップの作成・配布で周辺住民に危険を周知するよう求めている。とくに著しく警戒が必要な地域は「特別警戒区域」に指定する。警戒区域は「イエローゾーン」、特別警戒区域は「レッドゾーン」とよばれ、特別警戒区域には建築制限や移転勧告が出ることもある。国土交通省によると、土砂災害危険箇所は全国に約66万3000か所あり、このうち警戒区域や特別警戒区域に指定された地域は約53万1000か所(2018年3月末時点)である。

 土砂災害防止法は大きな土砂災害が起きるたびに改正を繰り返してきた。2014年8月、広島市北部で死者・行方不明者74人という平成に入って最大規模の土砂災害が発生したが、同地域の危険箇所の大半が警戒区域などに指定されていなかった。この反省を踏まえ、政府は2014年11月、都道府県が警戒区域・特別警戒区域への指定をしやすくする改正土砂災害防止法を公布。都道府県に、指定のための基礎調査を実施(2019年完了予定)し、災害リスクが高い箇所の公表を義務づけ、周辺住民への周知徹底を求めた。調査が遅れている都道府県には、国が是正を求める。また都道府県が「土砂災害警戒情報」を発表した際、都道府県に市町村への通知や住民への周知を義務づけた。さらに2016年8月の台風豪雨では、岩手県岩泉(いわいずみ)町で高齢者グループホームの入居者9人が犠牲になった教訓を踏まえ、政府は同年6月、土砂災害防止法を改正し、避難に介助が必要な人が利用する福祉施設、学校、病院などが警戒区域内にある場合、当該施設の所有者・管理者に対し、避難計画づくりや訓練の実施を義務づけ、市町村長は必要な指示をするとした。

[矢野 武 2018年9月19日]

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