日本大百科全書(ニッポニカ) 「地域再生事業債」の意味・わかりやすい解説
地域再生事業債
ちいきさいせいじぎょうさい
地域の活性化や雇用の創出を図る地方単独事業にあてるための地方債である。小泉純一郎内閣が打ち出した「三位一体改革」(国が地方に支出している国庫補助金と地方交付税を削減し、かわりに一定の税源を国から地方へ移譲する改革)によって、地方交付税が大幅削減され、財源不足の自治体が増えたので、総務省が一定の条件を満たす自治体に2004年度(平成16)から発行を認めることになった。
通常の地方単独事業では、事業費の一定割合が地方債で、残りは一般財源によってまかなわれる。地域再生事業債は、100%地方債で事業ができるようになっており、しかもその元利償還に必要な資金は、後年度に、地方交付税で補填(ほてん)することになっている。発足当初の2004年度および2005年度の地方債計画上の発行額は、それぞれ8000億円とされた上に、総務省としては、当該計画額にかかわらず、要件を満たす自治体に対しては、要望に応じて全額配分するというきわめて柔軟な運用方針がとられた。
地方交付税については、従来、自治体の投資事業にかかわる地方債の元利償還金の一定割合を、その基準財政需要額のなかに算入するという「事業費補正」の措置がとられ、これが地方交付税の本来のあり方ないしは性格を後退させ、その制度的行き詰まりの大きな要因の一つとして指摘されてきた。とりわけ、この事業費補正方式による地方単独事業は、バブル崩壊後の1990年代に国の景気対策に組み込まれ、急速に拡大していった(たとえば「ふるさとづくり事業」の地域総合整備事業債)。このような背景があるにもかかわらず、三位一体改革の過程で生じる自治体の財源不足を補うために、同様な手段を一時しのぎに使うのは、地方分権改革が目ざす自治体の財政自主性あるいは財政規律という観点からいって問題があり、地方交付税制度自体の改革に逆行するものであった。
地域再生事業債は2007年度まで発行されたが、2008年度には2006年度に創設された行政改革推進債に移し替えられ、2009年度には単独の制度としては廃止された。廃止以前もその発行規模は年度を追うごとに減額され、行革推進債との統合前の2007年度の発行額(地方債計画)は1500億円と、当初に比べ大幅に縮減された。
なお、2006年度に創設された行革推進債は、計画的に行政改革を推進し、財政の健全化に取り組んでいる地方公共団体に対して、公共施設等の整備事業を円滑に実施するために認められるようになった起債制度である。当該事業についてはすでに通常の地方債発行が認められているが、それに加えて行政改革の取り組みによって将来の財政負担の軽減が見込まれる範囲内において、行革推進債で充当できるとする措置である。
[中野博明]