日本古代および中世において地子という名目で収穫の一部が耕作料として支払われ耕作されていた田地のことをいう。《延喜式》では〈位田,職田,国造田,采女田,膂力婦女田,賜田等未授の間,および遥授国司公廨田,没官田,出家得度田,逃亡除帳口分田,乗田〉が輸地子田と定められている。これらの諸田はいずれも公田で地子は国に納められたが,私田(墾田)または11世紀以降に現れる私領田も地子田として経営され,田主または私領主が地子を徴収する場合が多かった。古代の地子率は収穫の5分の1だった。《延喜式》では公田の反当標準収穫量を上田500束,中田400束,下田300束,下下田150束と定め地子徴収の基準としていた。中世においても,地子田経営の場合,私領主(地主)に耕作者である作人から地子が支払われたが,その地子率は土地の生産力によってさまざまであり,古代のような明確な基準は存しなかった。
執筆者:泉谷 康夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…農民が国衙や荘園領主から公領・荘園の田地のあてがいをうけて耕作すること。9世紀後半から10世紀にかけて,国家の営田や荘園において,いわゆる地子田経営がおこなわれるようになる。これは当時〈力田之輩〉とか〈有能借佃者〉〈堪百姓〉などと呼ばれる有力農民=田堵(たと)の成長が見られたのに応じて,律令国家・国衙や荘園領主が彼らに田地を割り当てて耕営せしめ,地子(じし)を弁進させた経営方式である。…
※「地子田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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