剰余の田の意で,律令土地法下で口分田や位田,職田などを給した残りの田。公乗田という語の存在が示すように無主の公田を代表する田種で,国司の直接の管理の下に班田農民の賃租によって経営された。小作料にあたる地子稲は田品別の法定収穫量の20%で,国司の手で軽貨に交易されて太政官に送られ,官人に対する臨時の供給の財源とされた。乗田が全国的にどの程度の割合で存在したかは不明だが,740年(天平12)の遠江国浜名郡の例では,同郡の田1086町余のうち約16%弱に当たる170町余が乗田であった。9世紀に入って,班田収授法が崩壊してゆくに伴い,乗田はしだいに一つの地目として固定化し,その地子稲も太政官厨の財源として必須のものとなった。そのため政府は全国的に一定の乗田面積の確保につとめている。また10世紀以降の荘園体制のもとで,乗田が輸地子田という意味で公田と区別されることも行われるに至った。
→公田
執筆者:虎尾 俊哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
律令制(りつりょうせい)的土地制度のもとにおいて、口分田(くぶんでん)、位田(いでん)、職田(しきでん)(職分田)などを班給して残った田のことで、律令用語としての公田の根幹をなすものであった。それゆえに乗田は、口分田などの班給田を操作する場合の予備田であり、班田収授制の運営において調整的な役割を担うものであった。養老令(ようろうりょう)の規定によると、諸国の公田=乗田は国司の責任管理のもとに賃租経営(田地の賃貸借)を行い、地子(じし)(穫稲の10分の2)を徴収してこれを中央の太政官(だいじょうかん)に送り、太政官はこの公田地子をもって太政官内の雑用にあてることになっていた。賃租の責任は国司にありながら、その収益は国司のものにならなかったところに乗田経営の特色がある。
[村山光一]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
班田収授制において,口分田(くぶんでん)・位田・職田(しきでん)などを班給したあまりの田。自然災害によって口分田が失われたときには乗田により補うこととされていた。しかし乗田は収穫高(田品)の5分の1を地子(じし)として収取する賃租経営が行われ,その地子は太政官の雑用にあてるため京進が義務づけられていたから,実際にはあらかじめ太政官の必要数を乗田と称して確保していた可能性が高い。律令の田制において公田の主体であった。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
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[古代,中世]
古代律令国家の土地国有制の下では,田地は輸租田,不輸租田,輸地子田に区別されていた。《延喜式》主税式の定めるところでは,位田・職田(しきでん)・国造田・采女(うねめ)田・膂力婦女田・賜田等の未授の間,および遥授国司公廨田(くがいでん)・没官田・出家得度田・逃亡除帳口分田・乗田(じようでん)が輸地子田とされている。乗田(口分田として班給した残りの田地のことで公田ともいう)についてみると,国家はこれを賃租に出し,一定の賃租料を収入としたのであり,《令義解》の田令公田条によれば賃は乗田を1年を限って売り,春にその値をとることを称し,租は人に与えて耕作させ,秋に稲を輸さしめるものであって,この輸稲を地子というと記されている。…
※「乗田」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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