ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「坂口志文」の意味・わかりやすい解説
坂口志文
さかぐちしもん
免疫細胞生物学者。自己組織への攻撃を抑制する免疫細胞,制御性T細胞 Tregを発見してその機能を明らかにし,自己免疫疾患などの治療や予防に道を開いた。2025年,「末梢性免疫寛容の発見」により,アメリカ合衆国のフレッド・ラムズデル,メアリー・E.ブランコウとともにノーベル生理学・医学賞(→ノーベル賞)を受賞した。
1976年京都大学医学部卒業。1983年同大学医学博士号取得後に渡米。ジョンズ・ホプキンズ大学やスタンフォード大学等の客員研究員を経て,1995年東京都老人総合研究所免疫病理部門部門長,1999年京都大学再生医科学研究所教授,2007~11年同所長,2011年大阪大学免疫学フロンティア研究センター教授,2016年同特任教授。2025年大阪大学特別栄誉教授。
人や動物は体内に侵入した異物を排除する免疫システムをもっているが,この免疫システムが暴走すると,リンパ球が正常な自己細胞の抗原にも反応して組織を破壊し,関節リウマチや糖尿病などの自己免疫疾患を発症する。生後 3日のマウスの T細胞をつくる胸腺を除くと自己免疫疾患になることから,坂口は自己組織への攻撃を抑制する免疫細胞が存在すると考え,1995年にこの細胞が CD25という蛋白質を表面にもつT細胞,制御性T細胞であることを明らかにした。その後,制御性T細胞の発生や機能に重要なマスター遺伝子として Foxp3を同定し,制御性T細胞には増殖と制御機能をもつ 2種類が存在することを明らかにした。制御性T細胞は一部の癌細胞を免疫システムから保護していることから,制御性T細胞を減らすことができれば,癌を抑制できることになる。制御性T細胞は臓器移植患者の免疫抑制や,癌,アレルギー治療などの幅広い分野での応用が期待されている。2016年にベンチャー企業レグセル Reg Cellを設立し,制御性T細胞を用いる治療法の開発に取り組んでいる。
2012年日本学士院賞,2015年ガードナー国際賞,2017年クラフォード賞,2020年ロベルト・コッホ賞など受賞多数。2017年文化功労者選定。2019年文化勲章受章。
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