壺井義知(読み)ツボイヨシチカ

デジタル大辞泉 「壺井義知」の意味・読み・例文・類語

つぼい‐よしちか〔つぼゐ‐〕【壺井義知】

[1657~1735]江戸中期有職故実家。河内かわちの人。名は「よしとも」とも。号、鶴翁など。通称、安左衛門。実証研究を確立し、多く門人を指導した。著「装束要領抄」など。

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精選版 日本国語大辞典 「壺井義知」の意味・読み・例文・類語

つぼい‐よしちか【壺井義知】

  1. 江戸中期の有職故実家。字(あざな)子安。号は鶴翁・鶴寿など。通称安左衛門。河内大阪府)の人。有職故実の研究に従事記録によって自らの説をたてた。日本有職故実学の鼻祖。著「職原抄弁疑私考」「装束要領抄」など。明暦三~享保二〇年(一六五七‐一七三五

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朝日日本歴史人物事典 「壺井義知」の解説

壺井義知

没年:享保20.10.24(1735.12.8)
生年:明暦3.2.9(1657.3.23)
江戸中期の故実家。初名,韶政。字は子安。通称安左衛門。号は鶴翁。河内国辻子村(東大阪市)の農家三池道意の子。14歳のとき父と死別したため,母方の壺井氏に養われ,壺井姓を名乗る。大坂で筒井吟竜軒(白雲老人)に書を学び,信州松本,加賀金沢に仕官をのぞむが叶わず,京都で四辻公韶に青侍として仕える。平田内匠に官職について学んだが,ある夏に土用干しを手伝った折,内匠が『職原抄大全』を秘本のように取り扱うのを見て失望,以後独学で古記録を探索,調査し,歌学,神学にも知識を広げ故実全般を研究した。享保10(1725)年には将軍徳川吉宗に招かれて江戸に出府,書物奉行下田師古を通して公家装束などについて問われた。旺盛な研究ぶりは,「我としたけて学ばんとこころざす事なれば,夜をもつて日につがずんばたるべからず。たとへば十年夜を寝ずんば,人の二十年にあたるべしと,それより宵の内をいささかまどろみ,夜を日についで,官職の学問をはげみ」と『南嶺遺稿』(1757)で門人多田南嶺が回想しているとおりで,他の故実家のおよばぬところであった。『装束要領抄』『鄙鶴問答』『職原抄通考』『職原抄弁疑私考』『紫式部日記傍註』『昔伝拾葉』『装束文飾推談抄』『枕草子装束抄』など多数の著作は,それまでの研究と異なり,記録による実証を旨としたものである。京都中立売新町西入北側に住んで公家や地下も含む多数の門人を持ち,南嶺はじめ谷村光義,速水房常,徳田良方などを輩出した。墓は京都市左京区浄土宗清光寺。<参考文献>林森太郎「壺井鶴翁に就て」(『史林』1号)

(白石良夫)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「壺井義知」の解説

壺井義知 つぼい-よしちか

1657-1735 江戸時代前期-中期の有職(ゆうそく)家。
明暦3年2月9日生まれ。京都にでて四辻(よつつじ)家につかえ,平田内匠(たくみ)に官職をまなぶ。のち独学で故実を実証的に研究し一家をなした。享保(きょうほう)20年10月24日死去。79歳。河内(かわち)(大阪府)出身。字(あざな)は子安。通称は安左衛門。号は鶴翁,鶴寿,温故軒。名は「よしとも」ともよむ。著作に「職原鈔弁疑私考」など。

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世界大百科事典(旧版)内の壺井義知の言及

【位署書】より

…律令制において,官人が文書に署名するときなどに,その人の帯びている位階(以下,位という)・官職(以下,官という)・姓・名を,一定の規式にしたがって書くこと,また書いたもの。律令官位制度は1869年(明治2)まで1200年近く行われたので,叙任者にとっては必要な知識であったが,令には基本的な規定しかないため,早くから有職故実の一部として実例を集めて研究・帰納され,その成果は《拾芥(しゆうがい)抄》などに集成されており,江戸時代中期には壺井義知が《位署式私考》《位署難義私考》を著している。公式令の詔書式以下の署名が官・位・姓・名の順であることから,官位相当のときは官・位の順に書くことが判明し,また選叙令に1人で2官以上に任ぜられたときは,一を正官,他を兼官とせよ,官位不相当のとき,官が位より低いときは〈行〉,官のほうが高いときは〈守〉とせよ,と定めている。…

【職原鈔】より

…群書類従本では〈准大臣〉の項が明らかな後筆である。江戸時代の多数の注釈書のうちでは,壺井義知の《職原鈔通考》がもっともすぐれている。《群書類従》所収。…

【律令法】より

…降って室町時代に一条兼良は《令抄》を著したが,これも古来の注釈を摘記したものにすぎない。ついで江戸時代に入ると漢学者,国学者の双方による律令研究が盛行し,注釈書を残した者に壺井義知(つぼいよしちか)(1657‐1735),荷田春満(かだのあずままろ),稲葉通邦(いなばみちくに)(1744‐1801),河村秀穎(ひでかい),河村秀根(ひでね),薗田守良(そのだもりよし)(1785‐1840),近藤芳樹などがあるが,依然として研究の中心は解釈学におかれていた。 しかし近代史学の発達とともに,律令の研究はその解釈にとどまらず,多方面にわたって深化した。…

※「壺井義知」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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