故実(読み)コジツ

精選版 日本国語大辞典 「故実」の意味・読み・例文・類語

こ‐じつ【故実】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古くは「こしつ」 )
  2. 儀式、法令、軍陣、作法などの先例と、先例となるに足りる事例。また、それに通暁して、実状に照合し、先例の適否の判断能力のある人。
    1. [初出の実例]「践長之慶非故実。延祚之義。抑有前聞」(出典類聚国史‐七四・冬至・弘仁一三年(822)一一月丁巳)
    2. 「たやすく改められがたき由、故実の諸官等申しければ」(出典:徒然草(1331頃)九九)
    3. [その他の文献]〔国語‐魯語〕
  3. 心得ておくべきこと。
    1. [初出の実例]「学道の用心と云ふは、わが心にたがへども、師の言葉、聖教のことばならば、暫く其れに随って、本の我見を捨てて改めゆく、此の心、学道の故実也」(出典:正法眼蔵随聞記(1235‐38)六)
  4. 猶予すること。免除
    1. [初出の実例]「祈祷中事尤可故実事歟」(出典:大乗院寺社雑事記‐寛正六年(1465)一一月六日)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「故実」の意味・わかりやすい解説

故実
こじつ

儀式,典礼,行事,法制,服飾,軍陣などの規定,古例,習慣で,最も模範的な例証をいう。普通,有職 (ゆうそく) 故実と呼びならわされているが,有職とは公家故実を,故実とは武家故実をさす場合が多い。平安時代中期以降,宮廷中心の年中行事が盛んになると,その作法や先例などが重んじられ,九条 (藤原師輔) ,小野宮 (藤原実頼) ,西宮 (源高明) の三大源流が生れ,『西宮記』『北山抄』などの公家故実書が著わされた。このような傾向は武家にも及び,室町時代には伊勢,小笠原の両氏が武家の故実を司り,江戸時代には吉良畠山などの5家が高家として,武家故実の伝承にあたった。

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普及版 字通 「故実」の読み・字形・画数・意味

【故実】こじつ

古事範例とすべきもの。〔国語、周語上〕事を賦し刑を行ふに、必ず訓に問ひ、故實に咨(はか)る。問ふを干(をか)さず、咨るを犯さず。

字通「故」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の故実の言及

【有職故実】より

…平安時代以後,朝廷の儀式典礼を行う場合,そのよりどころとなる歴史的事実を故実といい,この故実に通じていることを有職といった。有職は〈ゆうそこ〉ともいい,古くは有識と書いた。…

※「故実」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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