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国際私法 こくさいしほう private international law

翻訳|private international law

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

国際私法
こくさいしほう
private international law

国際的な法律問題のうち,特に私人や企業が主体となる家族関係および取引関係などの私法問題を取扱う法分野である。権利・義務に直接かかわる実体法問題のほか,その権利の実現のための手続問題も含まれる。

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デジタル大辞泉の解説

こくさい‐しほう〔‐シハフ〕【国際私法】

国際結婚や貿易取引のような複数の国とかかわりのある渉外的私法関係を規律する統一法がない場合に、それに適用できる準拠法を指定する法。外国判決の承認・執行や裁判管轄権の問題も扱う。

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監修:松村明
編集委員:池上秋彦、金田弘、杉崎一雄、鈴木丹士郎、中嶋尚、林巨樹、飛田良文
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百科事典マイペディアの解説

国際私法【こくさいしほう】

国際的私法関係についていずれの国の法を準拠法として適用すべきかを指定する法則。国際結婚,国際取引などが準拠すべき法はこれによって指定される。民法,商法等を実質法というのに対し,内容の異なる諸国の私法が併立することを前提とし,それらの法律の抵触を解決するにとどまるところから,抵触法ともいわれる。
→関連項目国際法国際民事訴訟法裁判権属人法主義反致

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世界大百科事典 第2版の解説

こくさいしほう【国際私法 private international law】

国際的な性質を有する私法関係を究極的な規律の対象とする最も一般的な法律をいう。かつては国際民法droit international civilと呼ばれたことがあったが,これは国際私法の一般的な性格を示す好例である。他方,広範囲な規律対象のうち特殊な考慮を要する分野を独立させ,国際商法国際労働法国際取引法国際運送法などという名を冠して個別に研究されることも少なくない。 世界の人々が,それぞれに固有の裁判制度,法律,行政組織をもった国家と呼ばれる社会に分属して生活し,かつ相互に国境を越えた交流関係を保っていこうとするとき,次のようなことを考えねばならない。

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大辞林 第三版の解説

こくさいしほう【国際私法】

国際結婚・貿易取引などのような複数の国に関わる渉外的私法関係を処理するにあたり、いずれの国の法を適用するかを指定する法。抵触法ともいう。抵触法を定める法典として「法の適用に関する通則法」がある。広義には、抵触法の他、公法の抵触問題(行政法・租税法等の抵触)、統一法(条約等)、準国際私法、外人法、国際民事手続法等の渉外的関係を規律する法規のすべてが含まれる。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

国際私法
こくさいしほう
private international lawconflict of laws英語
droit international priveフランス語
internationales privatrechtドイツ語

定義

国際的な法律問題のうち、とくに、私人・企業が主体となる取引関係、家族関係などの私法上の問題およびその手続法上の問題を扱う法分野。国際公法が国家や国際組織を主体とする主権を中心として、外交関係、武力行使、領域などの問題を扱うのに対して、国際私法は、私人や企業を主体とする権利義務や法律関係、つまり、契約、不法行為、婚姻、親子、相続などの私法的問題を扱う。国際法と一般によばれるのは国際公法である。
 現代における人々の生活は国境を越えて営まれているので、インターネットを通じて外国の事業者から商品を購入したり、外国旅行中に事故にあったりすることは稀(まれ)ではなく、さらには国際結婚や国際養子縁組なども珍しくはなくなっている。他方、これらに適用される法律の面では、世界中で一つの統一法が適用されているわけではなく、各国で、また国によっては州や地域ごとに異なる法が適用されている。国際的な航空運送や海上運送などについては条約による法の統一が図られているものの、そのような分野はごく例外的であるうえ、締約国数は限られ、また、締約国の間でも裁判制度は統一されていないため、時の経過とともに解釈適用が異なってしまうことが避けられない。また、家族法の分野では、民族の伝統や宗教の影響等があるため、法の統一は不可能といってよい。このように国・地域ごとに独自の法が存在し、内容上、それらは相互に抵触しているという状態を前提として、国際私法は、国境を越えて営まれる生活関係にいずれの国・地域の法律を適用するかという準拠法決定・適用という方法を通じて法秩序を維持しようとしている。法の抵触を解決しているということから、国際私法は「抵触法」ともよばれている。日本では1898年に施行された「法例」(明治31年法律第10号)が最初の国際私法の基本法典であり、現在では、「法の適用に関する通則法」(平成18年法律第78号)となっている。
 狭い意味での国際私法は、この準拠法決定・適用に関する規則だけをさす。これに対して、広い意味での国際私法には、裁判や仲裁などの紛争解決のための手続法や国際倒産法を含み、これは国際民事手続法(国際民事訴訟法)ともよばれる。さらに、広い意味での国際私法では、国籍法や外国人・外国企業の公法的な規制などの関連領域の法律問題も合わせて考察の対象とされている。[道垣内正人]

基本的な理念と方法

狭義の国際私法(抵触法)による準拠法選択の基本的な考え方は、事案にもっとも密接に関係する地の法律を選び出すということである。そうすることによって、その事案にもっともふさわしい法律が適用され、国際的な私法秩序が安定的に維持されると考えられている。この最密接関係地法を定める方法として、個別事案ごとにさまざまな要素を考慮して判断していくという方法もありうるが、それでは、裁判をしてみなければ準拠法が何であるのかの判断がつかない場合が多発し、法的安定性を害することになる。そこで、国際私法では、単位法律関係(不法行為、離婚など、同じように準拠法を定めてよい法的問題のグループ)ごとに、当事者の国籍や常居所、結果発生地、目的物所在地といった特定の地の法律を導き出すことができる場所的な要素のなかから最密接関係地法を選び出すために適当なものを選んで、それを「連結点」(連結素)とし、その連結点を介して指定される法律を準拠法とするという方法が採用されている。
 たとえば、他人の行為によって損害を被った場合、その加害者に対してその損害の賠償等を求めることができるか、その要件は何か、いかなる種類・程度の救済方法が認められるかといった法的問題について、最密接関係地は加害行為の結果が発生した地であると考えられるので、それらの問題をまとめて「不法行為」という単位法律関係とし、結果発生地を連結点としてその地の法律が準拠法とされる。この国際私法ルールは、不法行為は加害行為の結果が発生した地の法によるというものである(法の適用に関する通則法17条本文)。また、相続人の範囲をどうするか、相続分をどうするか、相続人の資格の喪失原因はどうするかといった法的問題については、被相続人(死者)の国籍という連結点により被相続人の本国が最密接関係地であると考えられるので、「相続」という単位法律関係については被相続人の本国法によるという国際私法ルールとなる(同法36条)。
 他方、国際民事手続法の基本理念は、国際的な私法秩序の安定維持という国際私法の理念の実現に助力するため、実体法上のあるべき権利義務や法律関係を具体的に明らかにし、それに従った救済方法等を命ずるべく、手続法的な処理を行うことにある。たとえば、法的紛争について、どの国の裁判所で裁判をすることができるかという国際裁判管轄の問題や、一国の裁判所の判決が他の国でも効力を認められ、他の国にある財産に対しても強制執行ができるかという外国判決の承認・執行の問題が国際民事手続法の中心的な課題である。その他、外国への送達、外国での証拠調べ、さらには、国際商事仲裁や国際倒産法の問題も重要なテーマである。[道垣内正人]

抵触法の性質

準拠法の決定・適用に関する狭義の国際私法(抵触法)は、間接規範という性質を有する。間接規範とは直接規範に対するものである。直接規範は民法や商法のように権利義務や法律関係を直接に定めるものであり、たとえば契約が成立しているか否か、成立しているとすればどのような権利義務が発生するのかについての答えを与えるものである。これに対して、間接規範は直接規範を選び出すことを目的とするものであって、たとえば、ある契約についてA国の法律によるという結論を導き出すだけであって、直接に事案の解決をもたらすものではない。その意味で間接的な規範である。
 同じく間接規範とされる法として、「時際法」や「人際法」がある。時際法とは法の時間的な適用関係を定めるものである。法改正の結果、時間をさかのぼると同じ問題について時期によって異なる解決が与えられている状態になっている。そこで、ある問題にいつの時点の法を適用すべきかが問題となり、これを定めるのが時際法である。抵触法が間接規範であるのと同様に、時際法も間接規範である。時際法は、日本では通常、法律の附則において規定されている。他方、人際法とは、エジプト、シリア、イラン、イラク、インド、インドネシアなどのように一国のなかで宗教によって婚姻法などが異なる人的不統一法国において、たとえばある婚姻に一国内のどの婚姻法を適用するのかを定める役割を果たすものである。たとえばインドでは、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、パーシー教、ユダヤ教などの教徒のための婚姻法が存在する。このような国で適用規範を定める人際法も直接に事案を解決するのではなく、事案を解決する直接規範を選び出すという点で間接規範である。
 ただし、国際私法が適用関係を定める対象としているのは諸国の法であって、外国法はその外国の主権の行使として内容が決定・変更されるため、それらの法の適用関係は間接的にしか規定できないのに対し、時際法や人際法は自国法の適用関係を対象としているので、煩を厭(いと)わなければ、場合分けをしてそれを法律の適用要件の一部として書き込むこともできないわけではない。その意味で、時際法および人際法が直接規範の一部として規定することもできなくはないものであるのに対し、国際私法は純粋な意味で間接規範である。
 国際私法(抵触法)と時際法との関係は、国際私法の処理を先行させ、特定の国の法が準拠法となることが確定した後に、時際法を適用していつの時点の法を適用するかを定める。国際私法により準拠法とされたのが人的不統一法国の法である場合には、その国の規則によりどの法が適用されるのかを定めたうえで、時際法を適用することになる。[道垣内正人]

準拠法の決定・適用プロセス

前記「基本的な理念と方法」の章で述べたとおり、国際私法は、国際社会に法秩序を築くため、単位法律関係ごとに準拠法を決定し、これを適用する。そこで、どのような単位法律関係を設定するのか、どのような連結点を用いて準拠法を決定するのか、外国法が準拠法となったとき何か問題は生じないのか、などが問題となる。国際私法は、このような準拠法の決定・適用を次の四つのプロセスに分けて行っている。[道垣内正人]
法律関係の性質決定
まず第1段階として、われわれの生活関係をいくつかの単位法律関係に分解する。たとえば、婚姻の実質的成立要件、方式、身分的効力、夫婦財産制というように、かなり細かく単位法律関係を分けることもあれば、動産および不動産に関する物権およびその他登記すべき権利がひとまとまりとして物権という一つの単位法律関係とすることもある。前述のように、国際私法の基本的な理念は、法的問題について最密接関係地法を準拠法として決定することにあるので、同じ最密接関係地法をもつ法的問題の集合が一つの単位法律関係となる。たとえば、所有権も担保物権も目的物所在地法が最密接関係地法と考えられるので、いずれも物権という一つの単位法律関係に含まれることになる。
 国際私法規定の解釈論としては、設定されている単位法律関係を示す法概念をいかにして定義するのか、という問題が生じる。これは、「法律関係の性質決定」(略して「法性決定」ともいう)といわれる問題である。たとえば、離婚の際の親権者指定の問題は「離婚」の問題として準拠法を定めるべきか(法の適用に関する通則法27条)、「親子間の法律関係」の問題として準拠法を定めるべきか(同法32条)が議論されてきた。今日では、子の幸福のための問題であるので、問題の中心は子にとってふさわしい法であるべきであり、夫婦の利害調整のためにふさわしい法とされている離婚の準拠法よりも、子を含めた親子関係についての最密接関係地法によるべきであるとされ、裁判例でもそのように処理されている。[道垣内正人]
連結点の確定
国際私法では、単位法律関係ごとにそれともっとも密接な関係のある地の法を選び出すための媒介となる要素が定められる。これが「連結点」または「連結素」である。単位法律関係にとってもっともふさわしい規律はそれともっとも密接な関係のある地の法による規律であると考えられるので、単位法律関係を構成する要素のうち、当事者の国籍や常居所、結果発生地、目的物所在地といった特定の地の法律を導き出すことができる場所的な要素のなかから、連結点が選定される。その際、子細にみれば、もっとも密接な関係のある地の法は個々のケースで異なるであろうが、法的安定性の観点から、類型的判断として、特定の要素が連結点とされるのである。
 もっとも、連結点を一つだけ用いるという単純な準拠法選択方法だけではなく、複数の連結点を組み合わせて準拠法を定めることもある。たとえば、離婚の準拠法は、夫婦の本国法が同一であればその法により、同一本国法がないときには、夫婦の常居所地法が同一であるか否かをチェックし、それが同一であればその同一常居所地法により、さらに、同一常居所地法もないときには、事案を総合評価して、夫婦にもっとも密接に関係する地の法律によるとされている(法の適用に関する通則法27条本文)。これは「段階的連結」といわれるものである。また、不法行為の準拠法の決定にあたっては原則として結果発生地が連結点として用いられるが、結果発生地法が外国法である場合には、不法行為の成立・効力は日本法の認める範囲内でしか認めないこととされている(同法22条)。これは、結果発生地法と日本法との「累積的連結(累積的適用)」である。他方、これとは逆に、契約などの法律行為の方式については、その法律行為の効力に関する準拠法とその法律行為の行為地法とのいずれかに従っていればよいとされる(同法10条1項・2項)。これは効力の準拠法と行為地法との「選択的連結(選択的適用)」とよばれる。
 このような連結政策が採用されている国際私法規定を前提とすると、準拠法の決定・適用プロセスの第2段階として、設定されている連結点が指し示す地の法を具体的に確定してゆく作業がなされる。これを「連結点の確定」という。
 たとえば、本国法によるとされている場合にその当事者が重国籍者や無国籍者である場合にどうするかという問題もある。重国籍者の場合、国籍を有する国のいずれかに常居所を有している国があれば、その国が本国とされ、そのような国がないときには、事案を総合評価して、国籍を有する国のなかで当事者がもっとも密接に関係している国が本国とされる(同法38条1項)。なお、日本国籍を有する重国籍者については、日本を本国とするとの特則がおかれている(同法38条1項但書)。他方、無国籍者については、常居所地国を本国とし、常居所地国もなければ、居所地国を本国とする(同法38条2項、39条)。また、船舶は動産であるので、その物権問題については船舶の所在地法によることになるが(法の適用に関する通則法13条)、船舶はその性質上移動するものであるので、解釈上、現実の所在地ではなく旗国法(登録国法のこと。通常、船舶登録をした国の国旗を掲げている)によるべきであるとされている。
 なお、連結点を意図的に変更して自己に有利な準拠法が適用されるようにするという「法律の回避」といわれる行為がなされることがある。たとえば、会社設立にあたって設立要件の緩やかな国の法律を設立準拠法とするような場合である。日本では、一般に、法律の回避であるからといってその準拠法の適用を認めないという考え方は一般的ではない。ただし、会社設立についての法律の回避の事例のうち、日本に本店をおくか日本で事業を行うことを主たる目的とする外国会社は疑似外国会社とされ、日本で取引を継続して行うことはできず、これに違反して取引をした者は個人として取引の相手方に対してその会社と連帯責任を負うこととされていることに注意が必要である(会社法821条)。[道垣内正人]
準拠法の特定
次に、第3段階として、準拠法の特定がなされる。通常は、第2段階で連結点が確定されれば準拠法は特定される。第2段階の結論が日本法によるということになった場合は、もはや国際私法の任務は終わり、具体的な法律の解釈適用は民法や商法の領域の問題となる。しかし、外国法によるとの結論になった場合には、第3段階を経なければ準拠法の適用の段階である第4段階に移ることができないことがある。たとえば、本国法によるとされている場合に、その本国がアメリカのような「地域的不統一法国」であるときや、準拠法所属国の国際私法規定のいかんを考慮することとされている場合(「反致」)などに、準拠法の特定という作業が必要となるのである。
 「地域的不統一法国」とは、アメリカ、イギリス、ロシアなどのように、一国として法統一ができておらず、地域により法が違う国である。国際私法において連結点として国籍を用いるのは国単位で法律が特定できることを前提としているため、この前提に反するような国については、その国のなかのどの地域の法律を準拠法とするのかを決定する必要がある。法の適用に関する通則法第38条3項は、その国の規則があればそれによって定め、そのような規則がなければ、当事者がもっとも密接に関係する地域の法律を本国法とすると定めている。
 「反致」とは、外国法が準拠法とされる場合に、その外国の国際私法によれば他の法律が準拠法とされているのであれば、その他の法律によるというルールである。反致の目的は、国際私法の国際的不統一という状況下で、たとえば、とくにA国の国際私法ではB国法によるとし、B国の国際私法ではA国法によるとしている場合のように相互に譲りあっている場合(国際私法が消極的に抵触している場合)には、準拠法の決定にあたって、自国の国際私法のみならず、外国の国際私法も考慮することによって、選ばれる準拠法をできるだけ一致させようとすることにあるとされる。しかし理論上も実際上もそのような結果はかならずしも得られないとの立法論上の批判が有力である。法の適用に関する通則法第41条は、本国法として外国法が指定された場合において、その本国の国際私法によれば日本法が準拠法とされるときに限って日本法によるとしており、限定的な反致主義が採用されている。[道垣内正人]
準拠法の適用
そして最後に、第4段階として、準拠法が適用される。自国法が準拠法であれば、その渉外事案への適用ということ以上の問題は生じないが、外国法が準拠法である場合には、手続法上、その内容の確定、内容不明の場合の処理が必要となる。
 また、一般に、外国法の適用結果が国内の公の秩序または善良の風俗の維持の観点から受け入れがたいような場合も生ずる。そこで、そのような場合には「公序則」による外国法の適用結果の排除がなされる。法の適用に関する通則法第42条はこれを定めるものであり、たとえば、離婚の際の親権者指定において、日本との一定以上の関係がある事案において、親権者として父が不適切であるにもかかわらず、準拠法とされる外国法によれば母は親権者になることはできず、父だけが親権者になることができるとされている場合に、その外国法の適用結果を排除して、母を親権者として認めた裁判例がある。このように、公序則の適用にあたっては、事案の日本との関連性の度合いと、適用結果が日本からみて受け入れがたい程度とを総合判断してなされる。公序則という安全弁がついているからこそ外国法の内容について事前にチェックすることなく連結点を介して準拠法を導くという「暗闇(くらやみ)への跳躍」といわれる準拠法決定の方法を採用することができるのであり、その意味で公序則はきわめて重要である。ただ、公序則を濫用(らんよう)して外国法の適用結果を受け入れない態度を安易にとることは、最密接関係地法を適用することが国際私法秩序の安定維持に資するという国際私法の目的を害することになるので注意が必要である。[道垣内正人]

国際的統一の努力

国際私法は各国の法律が異なることを前提として、その適用関係を定めることによって国際的な法律関係に秩序を与えようとするものであるから、国際私法の国際的統一は論理上不可欠である。同じ一つの問題についてA国でA国法が適用され、B国でB国法が適用されるという状況を改めるために国際私法による準拠法決定をしようとしているのに、国際私法が不統一であると、A国の国際私法によればB国法が適用され、B国の国際私法によればA国法によるということになりかねず、これでは権利義務や法律関係が国によって違った扱いを受けるという状況は何ら改善されないからである。
 そこで、19世紀以来、国際私法の国際的統一を図る努力が行われている。ラテンアメリカ諸国は、1878年のリマ条約に始まり、その後も、1888年のモンテビデオ条約や1928年のブスタマンテ法典、さらに1975年以降はOAS(米州機構)のもとで多くの個別分野の条約を締結して国際私法統一の地域的統一の実をあげてきた。また、ヨーロッパでは、1893年にオランダ政府の発議で13か国の代表により国際私法統一会議(ハーグ国際私法会議)が開催され、以後、多くの個別条約を作成した。そして、1955年には、ハーグ国際私法会議は常設の国際機関となり、ほぼ定期的に外交会議を開催して多くの個別条約を作成し続けている。日本は1904年(明治37)にヨーロッパ諸国以外の国としては初めてこの会議のメンバー国となり、「遺言の方式の準拠法に関する条約」や「扶養義務の準拠法に関する条約」などを批准している。また、1950年代から1960年代にかけてイギリス、アメリカなどもメンバー国となり、テーマによっては非メンバー国にも参加を呼びかけてグローバルな議論の場として機能しており、国際私法の国際的統一のための中心機関となっている。なお、ハーグ国際私法会議では、準拠法決定ルールの統一条約だけではなく、国際民事手続法に関する条約も多く作成しており、日本も「外国への送達及び告知に関する条約」、「外国公文書の認証を不要とする条約」、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」などを批准している。
 その他、国際連盟時代の1930年、1931年には「手形、小切手に関する法律の抵触に関する条約」が作成され、また、国際連合になってからは、1958年に「外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約」(ニューヨーク条約とよばれる)が作成されている。日本はこれらをいずれも批准している。さらに、地域条約としては、ヨーロッパ地域では「裁判管轄及び判決の執行に関する条約」や「契約債務の準拠法に関する条約」などが作成され、これらは現在ではヨーロッパ連合(EU)規則となっている。[道垣内正人]

日本の国際私法

日本の主要成文法源は、法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)である。この法律は2007年(平成19)に施行された。これより前は、「法例」と題する法律が存在していた。法典論争の結果、旧民法と運命をともにして施行されなかった1890年制定の旧「法例」(明治23年法律第97号)にかわるものとして、明治31年(1898)法律第10号として公布・施行されたものである。何度かの小規模の改正の後、平成1年(1989)法律第27号によって婚姻・親子の部分につき大改正がなされ、現在の法の適用に関する通則法に至っている。
 法の適用に関する通則法は全43か条からなり、はじめの3か条を除き、第4条以下が国際私法の法典となっている。第1条の趣旨に続き、第2条は法律の施行時期、第3条は法律と慣習との関係を定めており、いずれも法の適用に関するルールである点で国際私法と共通の性格を有する。そもそも旧法の「法例」ということばは、古代中国の晋(しん)(265~420)において法典全体の通則という意味で用いられていたものであり、中国でも以来使われなくなっていたところ、明治の日本の立法者が法の適用関係を定める通則として復活させたという経緯があり、現行法の命名はこの内容をそのまま示したものである。
 そのほか、国際私法に関する条約を日本が批准して国内法化したものとして、遺言の方式の準拠法に関する法律、扶養義務の準拠法に関する法律、手形法(88~94条)、小切手法(76~81条)がある。また、国際私法の関連分野、とくに国際民事訴訟法や外人法に関する規定が多くの法律中にある(たとえば、民事訴訟法3条の2以下、118条、民法35条、会社法817条以下など)。もちろん、他の法分野と同じく、判例も重要な法源となっている。[道垣内正人]

歴史

単位法律関係ごとに連結点を介して準拠法を決定するという方法を提唱したのは、19世紀のドイツの法学者であるサビニーであった。彼は1849年に出版された著作『現代ローマ法体系』第8巻において国際私法の問題を論じ、私法関係にはその固有の性質上帰属している「本拠」ともいうべき法域があり、その法域の法を適用することによって、どこで裁判がなされても一つの問題にはつねに同じ法律が準拠法として適用されるので、各国の法律が異なっていても、法秩序を構築することができると説いたのである。この主張の背景には、国家と市民社会とは切り離すことができ、各市民社会には特定の国家の法律を超えた価値に基づく特有の私法があり、これはどこの国でも相互に適用可能なものであるとの考えである。ここにはローマ法の伝統やキリスト教など共通の価値観を基礎とするヨーロッパという法的共同体の意識があったとされている。
 サビニーの学説の登場までは、ルネサンス期のイタリアの法学者によって唱えられ、深められた「法規分類説」(法則区別説とか、スタチュータの理論ともよばれる)による方法が採用されていた。これは、単純化していえば、法規を物に関する法規(物法)と人に関する法(人法)に分類し、物法は属地的に適用し、人法は人的に適用するものであった。これは自国の法律の地域的な適用範囲を考えるという発想に基づく方法論であり、たとえば「物法」に属する物権に関する規定は、事案に関係する当事者の住所などにかかわらず、自国領域内でそれが問題となったのであれば、自国法をつねにそれに適用し、他方、たとえば「人法」に属する人の能力や身分に関する規定は、他国の領域内で発生した場合であっても、自国民についてはつねに自国法を適用するのである。これは、法律の一般的な適用範囲についての議論と連続性を保った考え方であり、ある意味では素直な発想であるといえよう。この法規分類説の時代の学者としてもっとも有名なのは、バルトーロ(バルトルス)である。
 サビニーは、このような法律の側からその適用関係を考えるという発想を逆転させ、生活関係(法律関係)に出発点を置き、その「本拠」はどこの国かを探すという方法を提唱したのであり、それまで約500年間も疑われてこなかった法規分類説の発想を根底から覆すコペルニクス的転換であった。19世紀後半以降、このサビニー型国際私法観は世界各国で行われた国際私法の法典化作業において取り入れられ、1898年(明治31)に制定された日本の国際私法典である「法例」はもっとも早くほぼ完全な形でサビニー型国際私法を採用したものの一つである。その後、サビニーの考えとは異なり、当事者に準拠法決定を委ねる当事者自治を認める規定が増加し(法の適用に関する通則法7条、16条、21条、26条2項)、また、裁判管轄を定め、日本で裁判をする場合には日本法によるという規定も導入され(同法5条、6条)、純粋な形ではなくなってきている。[道垣内正人]

国際民事手続法

手続法は一国の裁判機構のあり方と密接不可分の関係にあり、ある国で裁判がなされればその国の手続法以外の法によることはありえない。「手続は法廷地法による」といわれることがあるが、これは、手続法が属地的に適用されるということを国際私法的に表現したものにすぎず、手続法が公法的性格を有することに注意する必要がある。いずれにせよ、事件の内容が渉外性を有する場合に、その手続法上の扱いに関するルールを国際民事手続法とよぶが、その本質は国内の民事手続法の特則である。
 国際民事手続法上の問題は、大きく分けて、一国の主権が国外に及ぶ範囲にかかわる局面と、外国国家行為の効力を国内に受け入れることにかかわる局面とがある。
 前者の局面については、裁判権に対する国際法上の限界として、領土主権の観点から土地に関する訴えについてその所在地国以外には裁判権がないといった議論や、外国国家を被告とする裁判については裁判権が及ばないという裁判権免除、外国への送達、外国での証拠調べなどが議論されている。裁判権免除については、かつてはあらゆる事件について外国に対する裁判権を免除する絶対免除主義が採用されていたが、日本は2008年(平成20)に「国及びその財産の裁判権の免除に関する国際連合条約」を批准するとともに、「外国等に対する我が国の民事裁判権に関する法律」を制定し、国家の商業的活動については裁判権免除を与えない制限免除主義を採用している。ところで、多くの事件で実際に問題となるのは、国際法上の枠内においては、手続法的正義の観点から自己抑制された国際裁判管轄の範囲をめぐってである。これについては長く判例法に委ねられてきたが、2011年に民事訴訟法および民事保全法が改正され、明文の規定が置かれるに至っている。たとえば、財産事件一般について義務履行地を管轄原因とすることは、不法行為による損害賠償債務が持参債務(債務者が債権者のところへ金銭を持参して支払う債務)であるとすると、損害賠償請求をする原告の住所地に管轄が認められてしまうことから、過剰管轄であるとの批判にこたえ、契約事件において契約上の義務履行地が直接的にまたは間接的に定められている場合であって、それが日本国内にあるときにのみ、その義務の履行等を求める訴えについて国際裁判管轄が認められることとされた(民事訴訟法3条の3第1号)。もっとも、国際社会では想定外の事態もあり、また、他の国の裁判所へ事件を移送することはできないので、「特別の事情」があれば管轄を否定する旨の例外規定も置かれている(同法3条の9)。
 他方、外国国家行為の効力の受け入れの局面については、外国裁判所の判決の承認やその判決に基づく強制執行の可否、それを認める場合の要件(民事訴訟法118条、民事執行法24条)、外国法人の当事者能力、外国倒産手続への協力といった問題が議論されている。また、外国ですでに訴訟が係属している場合において、それと競合する訴訟を日本で再度提起することができるかという国際的訴訟競合の処理基準として、外国訴訟において将来下される判決が日本で効力を有するに至ると予想されれば、日本での訴えを認めるべきでないとする考え方は、外国判決の承認制度との整合性に配慮したものである。[道垣内正人]

将来への課題

現在の国際私法の最大の問題は、サビニー型国際私法の限界が表面化していることである。すなわち、「私法の公法化」といわれる現象が各国でみられ、労働者保護、消費者保護などを目的とする社会立法により、私人間の利益調整を図ることを目的とする純粋な私法の領域に、国家が一定の範囲で介入し、たとえば契約条項に制限を加えるようになってきている。そうすると、それぞれの法律の法目的の達成のためには、その法自らが地域的な範囲を定めることが必要となり、純粋な私法の領域は狭くなりつつあることが認識され始めている。そこで、有力になりつつある考え方は、「国際的強行法規(または絶対的強行法規)の特別連結」といわれるものである。これは、準拠法のいかんにかかわらず、一定の公益的な法目的を有する法律については、その適用を特別に認めるというものである。たとえば、日本に居住する労働者の労働契約については、その契約の準拠法が何法であれ、日本の労働者関係法は適用されることを認めるわけである。
 このように法の側で地域的適用範囲を定めるという方法は、歴史的には「法規分類説」(「歴史」の章参照)にみられた発想であり、また、刑法や独占禁止法などの経済法規については一般に採用されている考え方である。日本の刑法は属地主義を原則としつつ(刑法1条)、通貨偽造などの重大な犯罪行為については外国人が外国で犯しても処罰することを定め(同法2条)、殺人などについては日本人の国外犯を処罰することを定める(同法3条)等の規定を置いている。また、とくにアメリカでは、独占禁止法、証券取引法、環境法などさまざまな法律の「域外適用」をしており、他の国との摩擦が多数生じている。このように、公法については法律の地域的適用範囲をどうするかという発想で問題がとらえられていることを考えると、国際私法において強行法規の特別連結という例外を認めていくことが、ひいては国際私法の体系自体の見直しにつながるのではないか、その場合には、私法と公法の境界があいまいになりつつある以上、その区別を超えた統一的な法適用関係理論が求められるといった議論がなされている。
 また、国際私法の国際的統一問題は19世紀から努力が続けられてきたが、今日でもなお重要な課題である。しかし、国際私法の国際的不統一の解消がいまだに実現する糸口さえみえない状況であることは、法の適用関係を定めることを任務とする国際私法としては、その法目的を没却する根本問題である。そこでハーグ国際私法会議を中心とする国際機関の活動の抜本的見直しが必要であり、統一に向けた努力をより強化していく必要がある。[道垣内正人]
『道垣内正人著『ポイント国際私法総論』第2版(2006・有斐閣) ▽櫻田嘉章・道垣内正人編著『注釈国際私法 第1、2巻』(2011・有斐閣) ▽澤木敬郎・道垣内正人著『国際私法入門』第7版(2012・有斐閣) ▽櫻田嘉章著『国際私法』第7版(2012・有斐閣) ▽道垣内正人著『ポイント国際私法 各論』第2版(2014・有斐閣) ▽小出邦夫編著『逐条解説・法の適用に関する通則法』増補版(2014・商事法務)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ) この辞書の凡例を見る
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世界大百科事典内の国際私法の言及

【国際民事訴訟法】より

…国際間の交流が頻繁に行われるに伴い,A国人とB国人の離婚がC国の裁判所で問題になったり,A国の貿易商がB国の取引先とトラブルを起こし,訴訟や仲裁の問題に発展したりすることが増えてくる。民事事件がこのように複数の国にかかわりを持つ場合,裁判所がどこの国の法律によって裁判するのかというと,紛争の中身――人の権利義務――については,これが国ごとにまちまちにならぬよう古くから国際私法が発達した。その結果C国裁判所がA国法によって裁判しなければならないこともある。…

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