家庭医学館 「外耳道閉鎖症」の解説
がいじどうへいさしょう【外耳道閉鎖症 Aural Atresia, Meatal Atresia】
耳の孔(あな)の入り口から鼓膜(こまく)までの管腔(かんくう)(空洞(くうどう))、つまり外耳道(がいじどう)が、骨または結合組織(けつごうそしき)で閉ざされた状態です。内耳(ないじ)には異常がありません。
頻度は、骨で閉ざされた状態(骨性閉鎖(こつせいへいさ))のほうが高くなっています。
両側が閉ざされている場合と片側だけが閉ざされている場合とがあって、どちらかによって治療方針が大きく変わります。
[原因]
先天性(せんてんせい)(生まれつき)のものと後天性(こうてんせい)(生後)におこるものとがあります。
先天性のものは、胎生(たいせい)6か月ごろまでに完成する第1鰓溝(さいこう)(外耳道のもとになる組織)が管腔化するときの障害によっておこるといわれています。
後天性では、外耳道の慢性の炎症による軟部組織や骨の増殖(ぞうしょく)が原因です。
[症状]
外耳道が閉ざされているため、音が中耳(ちゅうじ)へ伝わらず、伝音難聴(でんおんなんちょう)になります(聴力レベルが60デシベル程度となる)。
[検査と診断]
視診(ししん)のほか、単純X線検査、断層X線検査、CTを撮影し、外耳道の状態、中耳の耳小骨(じしょうこつ)の状態や形態異常の有無(とくにあぶみ骨の存在の確認)、鼻咽腔(びいんくう)の炎症の有無(手術に際して)などを詳しく調べます。
聴力検査または聴性脳幹反応(ちょうせいのうかんはんのう)(ABR)の検査が行なわれます。
手術をすべきかどうか、いつ手術するか、手術の方法はどれを選ぶかなどを決定するために、これらの検査をきちんと行なうことが必要です。
[治療]
閉鎖が片側だけで、もう一方の聴力が正常であれば、当面は、手術は必要ではありません。
先天性であっても、言語の発達にまったく問題はおこりませんし、閉鎖しているほうの耳に補聴器(ほちょうき)を使う必要もありません。
手術は、高校生ぐらいまで待ってもいいでしょう。
早く治したいのであれば、急性中耳炎がおこりにくくなる8~9歳くらいで手術することも可能です。
先天性で、しかも両側が閉鎖している場合は、言語の発達する時期に十分な聴力を確保するために、できるだけ早くから骨導補聴器(こつどうほちょうき)を使用し始めるとともに、鼓室外耳道形成術(こしつがいじどうけいせいじゅつ)という手術をできるだけ早い時期に実施します。
●手術
手術は、ふつう全身麻酔をして行ないます。
手術の方法には、外耳道をつくる外耳道形成術と、さらに聴力を回復させる鼓室形成術があります。
先天性の場合、顔面神経が耳の骨(側頭骨(そくとうこつ))の中で異常な走行のしかたをしていることがあって、このときは、むずかしい手術になります。熟練した耳鼻咽喉科医(じびいんこうかい)に手術をしてもらうことが望まれます。
耳介(じかい)の形態異常(小耳症(しょうじしょう))をともなっているときは、耳鼻咽喉科医と形成外科医が緊密な連絡をとり、手術の時期・回数・方法などについて慎重に検討します。
がいじどうへいさしょう【外耳道閉鎖症 Aural Atresia, Meatal Atresia】
外耳道の中が塞(ふさ)がっているもので、先天性のものと、後天性のものがあります。
後天性のものは、外耳道の炎症・外傷・やけどなどのために肉芽(にくげ)(新しい組織になるための肉の増殖物(ぞうしょくぶつ))が盛り上がり、外耳道を瘢痕(はんこん)組織が塞ぐためにおこります。
先天性のものは、小耳症(しょうじしょう)(「小耳症」)を合併することが多く、耳の近くの顔面や中耳(ちゅうじ)にもさまざまな形態異常をともなうことがあります。
そして、ほとんどは外耳道が骨で塞がっていて耳の孔(あな)がなく、その側に、中等度以上の難聴(なんちょう)があります。
[治療]
先天性で、両側が塞がっている場合は、難聴のためにことばの発達が障害されるので、骨導補聴器(こつどうほちょうき)を着けて聴力を補います。
4~5歳になって、片側ずつ外耳道形成術(がいじどうけいせいじゅつ)(または造設術)を行ないます。鼓室(こしつ)形成術も行なえる場合は、聴力も改善できます。
小耳症の手術は、8~9歳になってから、おもに形成外科医が耳介(じかい)形成術を行ないます。
せっかく外耳道をつくっても、入り口あたりがしだいに狭くなりやすく、この部分を広げるための再手術が必要になることもあります。
後天性のものは、傷が治ってから塞がった部分を広げる手術をします。