多可(読み)たか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「多可」の意味・わかりやすい解説

多可(町)
たか

兵庫県中央部、多可郡にある町。2005年(平成17)、同郡中町(なかちょう)、加美町(かみちょう)、八千代町(やちよちょう)が合併して成立。周囲を三国(みくに)岳、千ヶ峰(せんがみね)、笠形山(かさがたやま)、篠ヶ峰(ささがみね)など、中国山地の山々に囲まれる。三国岳を水源とする杉原(すぎはら)川が、町の中央部やや東寄りを北から南へと流れ、これに並行して国道427号が走る。南西部は南流する野間(のま)川の流域。杉原、野間両川は、南東に接する西脇(にしわき)市内で加古(かこ)川に注ぐ。杉原川上流域を杉原谷といい、古くからの紙の産地。産出する紙(杉原紙)は公家の贈答品、武家公文書などに用いられ、その後、一般庶民にも使用が広まった。これに伴い、杉原紙は広く他国でも生産されるようになる。このため「杉原紙」は産地ではなく、紙の種類を表すようになった。一方、杉原谷および周辺一帯は引き続き杉原紙を製造していたが、近代に入り、洋紙の普及とともに衰退、大正期には中絶した。1972年(昭和47)に町立(旧、加美町)の杉原紙研究所を設立して再興、現在は県の伝統工芸品に指定され、その技術伝承に努めている。八千代地区特産の凍り豆腐(高野豆腐)は、嘉永(かえい)年間(1848~1854)に紀州高野山(こうやさん)から技術を導入したという。中地区は酒米として名高い山田錦(やまだにしき)の産地。山田錦の母方にあたる「山田穂」を発見したのは中区東安田(ひがしやすだ)の豪農山田勢三郎といい、山田錦の発祥地ともされる。綿を主体とする先染織物播州織(ばんしゅうおり)が盛ん。町の北西部は笠形山千ヶ峰県立自然公園の指定域。県立北播磨(きたはりま)余暇村公園、1991年(平成3)に竣工したロックフィルダムの糀屋(こうじや)ダムで、仕出原(しではら)川をせき止めた翠明(すいめい)湖、自然体験施設などを備える農林業公園「ハーモニーパーク」などの観光スポットがある。八千代区中野間(なかのま)の極楽寺(ごくらくじ)が蔵する絹本著色六道絵(3幅)は鎌倉時代末期の作とされ、国指定重要文化財。面積185.19平方キロメートル、人口1万9261(2020)。

[編集部]


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改訂新版 世界大百科事典 「多可」の意味・わかりやすい解説

多可[町] (たか)

兵庫県中央部,多可郡の町。2005年11月加美(かみ)町,中(なか)町,八千代(やちよ)町が合体して成立した。人口2万3104(2010)。

多加町北部の旧町。多可郡所属。1960年町制。人口7204(2005)。町名は《播磨国風土記》の賀負里(かみさと)にちなむ。加古川支流の杉原川上流域を占め,町域の大部分が山林である。平安時代からコウゾを原料とする杉原紙の産地として知られ,江戸後期まで和紙の生産が盛んであった。明治になって和紙の生産は衰え,大正時代には廃絶されたが,現在は杉原紙研究所が設けられ,伝統技術の保存につとめている。播州織物地帯の一角を占め織物業が盛んで,米作と地鶏の飼育を中心とする農業と杉,ヒノキの良材を産する林業も行われる。

多可町東部の旧町。多可郡所属。人口1万1256(2005)。加古川支流の杉原川が中央を南東流し,沿岸に水田や集落が展開する。播州織の中心的産地の一つで,明治初年より織物業が発展した。織物工場は中村町に多く,先染織物の技術をいかしてジャカードクロスなどの輸出が盛んであったが,国内向けに移行してきている。就業人口の半数近くが製造業に従事し,織物のほか食品,弱電,金属加工の工場もある。農業は稲作中心で,良質の酒造米の産地として知られる。

多可町南西部の旧町。多可郡所属。人口5844(2005)。南東は西脇市に接する。中国山地の南東端にあたり,町域の大部分は山林,原野である。加古川の支流野間川が南流し,川沿いに水田と集落が開ける。耕地が狭く農業経営は零細で,早くからシイタケ栽培,冬の寒気を利用した凍(しみ)豆腐の製造,織物などの副業が盛んであった。しかし第2次大戦後,凍豆腐の製造法は機械冷凍に変わった。西脇市に近い南部の大和地区では,播州木綿の生産が行われるが,近年の不況で苦境に陥っている。笠形山(939m)は〈播磨富士〉とも呼ばれる山容の美しい山で,登山者が多い。
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百科事典マイペディア 「多可」の意味・わかりやすい解説

多可[町]【たか】

兵庫県中央部に位置する多可郡の町。2005年11月,多可郡町,加美町,八千代町が合併し町制。国道427号線が通じる。185.19km2。2万3104人(2010)。

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