日本大百科全書(ニッポニカ) 「夜間学校」の意味・わかりやすい解説
夜間学校
やかんがっこう
evening school
有職者などが勤務時間外の夜間を利用して学校教育を受けることができるように、夜間に授業を開設する学校。全日制(フルタイム制)に対する定時制(パートタイム制)学校の一形態である。夜間学校は、義務教育後の後期中等教育・高等教育や職業教育の履修形態(夜間高校や夜間大学)として採用されるのが通例であるが、初等教育・前期中等教育や義務教育を受けられない者に対する機会均等の初期的措置としても開設されることがある。たとえば、日本で第二次世界大戦前には「小学校に類する各種学校」として尋常夜学校(夜間小学校)が設けられたし、戦後も夜間中学校が存在した。世界的には、最初の夜間学校は1525年イギリス・マンチェスターに設立された。19世紀初頭の1829年にフランスでは勤労成人のための科学技術講座を夜間に開設する国立の中央工芸学校が設立された。
日本の現行法上では、夜間において授業を行うことができるのは、高等学校の定時制課程と大学の夜間学部(通常、二部とよばれる)と短期大学の夜間学科である。義務教育後の教育機関である高等専門学校には夜間課程の設置は認められない。大学院の夜間課程は1989年度(平成1)から修士課程、1996年度から博士課程の開設が可能となった。専修学校や各種学校の夜間学校も存在するが、専門領域によって著しい差異がみられる。
全日制や昼間課程の進学率が高まると、当然のことながら夜間学校への在籍者が減少する。全日制に通うことができれば、学業と勤労の二重負担を無理して背負う必要はない。しかし、1980年代以降は、高等学校あるいは大学レベルの夜間課程生徒・学生数の減少にもかかわらず、高齢者の利用が増加している傾向にある。これは、高齢者が若い時代に行使できなかった就学機会を補償するという意味にとどまらず、高等学校・大学における学習と実社会との橋渡しという意味でも重要である。その意味では、生徒・学生数の減少に見合って夜間学校・課程を廃止する政策がみられるが、夜間中学も含めて生涯教育の観点からこれを見直し、全日制との格差是正や地域的、専門分野的な不均衡などの解消に向かっての公的配慮がますます必要になろう。
[桑原敏明]