日本大百科全書(ニッポニカ) 「教育の機会均等」の意味・わかりやすい解説
教育の機会均等
きょういくのきかいきんとう
教育を受ける機会が、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位または門地により差別されず、能力に応じてひとしく保障されるべきであるという、近代公教育を支える理念の一つ。日本国憲法第26条、教育基本法第3条・第4条はじめ学校教育法などの諸規定により、日本でも、無償の義務教育制度、それを基盤とする袋小路のない学校体系、奨学制度などの整備拡充により前述の理念の充実が図られている。
しかし憲法の「能力に応じて」と「ひとしく」との要請をともに充足させることは容易ではない。前者を重視すれば差別の、後者を強調すれば教育の画一化の是認になりかねない。障害児(者)教育、夜間中学、矯正教育、入試制度、生涯学習、生涯教育などの抱える諸問題を見据えながら、増大しつつある地域間や世代間の教育格差を、どう縮小していくのか、限られた財源との関係で、二つの要請の動的な充足が望まれる。
[木村力雄]
『伊ヶ崎暁生編『教育の機会均等』(『教育基本法文献選集 第3巻』所収・1978・学陽書房)』▽『辻功・木下繁弥編『教育学講座20 教育機会の拡充』(1979・学習研究社)』