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大衆デモクラシー タイシュウデモクラシー

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デジタル大辞泉の解説

たいしゅう‐デモクラシー【大衆デモクラシー】

大衆民主主義

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大辞林 第三版の解説

たいしゅうデモクラシー【大衆デモクラシー】

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

大衆デモクラシー
たいしゅうでもくらしー
mass democracy英語
Massendemokratieドイツ語

制限選挙制を基礎にした市民的デモクラシーに対して普通選挙制を基礎にした20世紀の大衆社会のデモクラシーをいう。ギリシア語に由来するデモクラシーの原義は「人民の支配」を意味する。フランス革命後成立した市民的デモクラシーは確かに「人民の支配」ではあったが、「教養と財産」をもつ市民のみに人民の資格を与える制限選挙制によって労働者階級は政治から排除されていた。しかしデモクラシーの理念の普及とともに、労働者階級の普通選挙制を要求する声が高まり、それに促されて、20世紀初頭までにはフランスドイツイギリスでは普通選挙制が導入され、そして第二次世界大戦後には議会制デモクラシー諸国ではほとんど普通選挙制が導入された。こうして未成年者を除く全人口、すなわち国民の支配が制度的にいちおう実現された。[安 世舟]

大衆デモクラシーの矛盾

ところで、世紀の変わり目を境に、本格的な工業化と都市化現象が始まり、共同体の絆(きずな)から解き放され、根なし草となって都市に流入した労働者階級は、大量生産、大量コミュニケーション、大量消費の社会・経済システムに組み込まれ、画一的生活を強いられた。そのうえ、彼らは労働力しか売るものをもたず、日々の暮らしに追われ、政治社会に関する教養はもちようもなく、無力で「孤独な群衆」と化するほかなかった。こうした群衆は社会学では「大衆」と規定されている。確かに普通選挙制によって制度的に大衆は「人民」のなかに入り込むことができたし、その結果成立することになった大衆デモクラシーは人民の多数者たる「大衆」の支配ではあるが、しかし大衆は支配者としての条件、すなわち「教養と財産」を欠いているために、大衆デモクラシーはその実質において、彼らの代表と称する者による支配にほかならなかった。もちろん、市民的デモクラシーも間接デモクラシーの形態をとる限り、市民が能動的でなければ、大衆デモクラシーと同じ矛盾に陥ることは必然的である。しかし後者の場合、大衆が「能動的市民」となりうる条件があまりにも少ないという点にこそ問題がある。したがって大衆デモクラシーはM・ウェーバーのいう「街道のデモクラシー」すなわち「大衆の情緒性を利用した独裁制」たるケーザリズムへの傾向を絶えずはらんでいるといえるのである。[安 世舟]

社会福祉国家の成立と政治過程の変容

さて1880年代から90年代にかけて社会主義政党が先進諸国において台頭したが、それは、当面の課題として国家権力の獲得を目ざして労働者大衆の組織化を図り、世紀の転換期には議会でその協力なくしては重大な政策決定を行うことができないほど大きな組織政党になっていた。それに対抗して資本家階級の政党も、労働者大衆を組織し体制内存在にとどめておくために、社会主義政党の要求のうち体制にとって危険の少ないものを漸次認める方向へ国家権力を動かし、内では社会立法、外では帝国主義の政策が採用され、労働者大衆はなにも失うものをもたぬプロレタリアートの存在から、守るべき「祖国をもつ市民」へと変容を遂げていった。それに対応して社会主義も共産主義と社会民主主義に分裂した。第一次大戦後、社会民主主義政党がブルジョア政党と連合して政権に参加し、議会制デモクラシーの形態をとった大衆デモクラシーは基本的には労使の巨大な大衆組織集団の協調によって運営された。それとともに労使以外の多元的利害関係者も組織化され圧力団体となって政治の世界に登場し、政治過程は集団間の対立・妥協となり、大衆デモクラシーは「集団デモクラシー」ないしは「多元的デモクラシー」といわれるようになった。[安 世舟]

協調支配体制の二つの危険性

他方、同時期に夜警国家から社会福祉国家への転換に伴って、国家機能の拡大と国家権力の中央への集中が進み、同時に権力の重心も議会から行政府へと移行し、それを担う官僚集団は政策決定において大きな影響力をもつに至った。こうして国家の権力エリートないし官僚エリートと巨大集団の幹部エリートとの一種の協調支配体制が成立した。それは二つの方向へ進む危険性をはらんでいる。もし各集団においてデモクラシーを活性化させる条件がないなら、ミヘルスの「組織寡頭化への鉄則」が作用し、権力は少数の幹部エリートに集中し、幹部独裁制が成立する。体制の危機に際しては、支配的政党は多元的集団の小型独裁者をその支配下に再編成して、極端な場合、イタリア・ファシズム型の「組合国家」を樹立する危険性である。もう一つは巨大集団間の利害対立が協調支配体制の枠内で解決されず、それを暴力で決着づけようとする場合、原子化された大衆の不安を組織したファシズム政党がすべての自由主義的組織集団を解体し、全体主義独裁制を樹立する危険性である。そこまで至らなくとも、国家権力が中央へ極度に集中し、それがますます人民から遊離する方向に運用されるなら、大衆は政治から退場し、それが政治的無関心、その帰結として選挙での棄権となって現れることは必至である。それとともに権力の正統性の危機が進み、大衆の支持を調達するための大衆操作が日常化する。その極限状態がナチス独裁である。それゆえに今日の大衆デモクラシーはふたたびその病理現象のファシズムへと傾斜しないように、大衆が公民となりうる条件を探究することが現代の緊急の課題である。[安 世舟]
『W・コーンハウザー著、辻村明訳『大衆社会の政治』(1961・東京創元社) ▽松下圭一著『現代政治の条件』(1959・中央公論社)』

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