関漢卿(読み)かんかんけい(英語表記)Guān Hàn qīng

精選版 日本国語大辞典 「関漢卿」の意味・読み・例文・類語

かん‐かんけい クヮン‥【関漢卿】

中国、元代の雑劇作家。大都(北京)の人。元曲四大家随一とされる。人物性格心理の描出、特に女性心理の描写にすぐれる。作品竇娥冤(とうがえん)」「救風塵」。生没年未詳。

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デジタル大辞泉 「関漢卿」の意味・読み・例文・類語

かん‐かんけい〔クワン‐〕【関漢卿】

中国、元の劇作家。13世紀後半に活躍。大都(北京)の人。号、已斎叟いさいそう。元曲四大家のうち第一人者。女性の性格描写にすぐれ、緊密な構成を特徴とする。17種ほどの作品が現存。作「竇娥寃とうがえん」「蝴蝶夢こちょうむ」「救風塵きゅうふうじん」など。生没年未詳。

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改訂新版 世界大百科事典 「関漢卿」の意味・わかりやすい解説

関漢卿 (かんかんけい)
Guān Hàn qīng

中国,元代の戯曲作家,元曲四大家の一人。漢卿は字であろうが,名は不詳。已斎と号し,大都(北京)の人。太医院尹の官歴がある。生没年はもとより,制作活動期さえ確かでないが,元雑劇が首都の大都を中心に盛行した,13世紀後半から14世紀初頭に至る間の活躍が想定される。豪放洒脱の風流人で,大都の芸能作家組織である〈玉京書会〉にあって指導的役割を担ったらしい。作品は60余編に及び,そのうち18編(疑問の作5編を含む)が現存する。いずれも〈雑劇〉形体の制約を克服して,緊密な構成と巧みな性格描写に利したばかりでなく,万人が享受しうる文学としての〈戯曲〉の特異性を認識して,それぞれに巧妙なプロットを工夫し,また,みんなの言葉〈口語〉の性能を生かした活発な歌詞により,人生の哀歓を多彩に描いた。多作はおのずから題材の多様を促し,史劇《単刀会》《西蜀夢》,裁判劇《蝴蝶夢》《緋衣夢》,恋愛劇《拝月亭》《謝天香》《金線池》など各分野に傑作を残したが,とくに女性を主人公として,その心理の描写に絶妙の手腕を発揮した。しかも,上掲のほか《救風塵》《望江亭》などで,聡明利発のヒロインがはつらつと行動する姿はまことに印象的で,しばしば対置される男性を圧倒し,そこには実人生の真実を写しとる風刺さえ感ぜられ,そのほか,あらゆる不正に屈せず無実の罪を負って刑死する若い寡婦の悲劇《竇娥冤(とうがえん)》も,元曲有数の傑作として推賞されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「関漢卿」の意味・わかりやすい解説

関漢卿
かんかんけい

生没年不詳。中国、元代第一の劇作家。大都(北京(ペキン))出身の人。金(きん)末に生まれ、13世紀後半に北京で戯曲の創作と演劇活動に従事し、作家グループのリーダー格であった。当時の劇作家楊顕之(ようけんし)、梁退之(りょうたいし)、費君祥(ひくんしょう)らは友人である。演劇界に詳しく、音楽に造詣(ぞうけい)が深かったことは彼の散曲から知られる。元代に書かれた北京地方誌『析津志(せきしんし)』によれば、博学でユーモラスな人物という。戯曲の大部分は女性が主役で、役柄も市井の婦人、遊女、腰元など変化に富む。いずれも理知的で温かみがあり、苦しみや圧迫に対して毅然(きぜん)と立ち向かう勇気をもっている。こうした女性や、異民族支配下の暗い社会、腐敗した官吏、ごろつき、頼りない書生など、口語を駆使して生き生きと描き出すのが特色である。作品数は60を超すが、現存するのは『救風塵』『竇娥寃(とうがえん)』『拝月亭』『単刀会』『調風月』『謝天香』等17種。『録鬼簿(ろくきぼ)』は「他界し、作品が行われている名家群」の冒頭に関漢卿の名を載せている。

[平松圭子]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「関漢卿」の意味・わかりやすい解説

関漢卿
かんかんけい
Guan Han-qing

中国,元の劇作家。大都 (北京) の人。号,已斎,一斎。金の遺民で,元に仕えて太医院尹になったという説があるが確かではない。 13世紀後半から 14世紀前半にかけて,大都を中心に盛んな演劇活動を行なった。元曲の第一人者で,作品として記録されるもの 63編。うち現存するのは傑作『竇娥冤 (とうがえん) 』『救風塵』をはじめ,『謝天香』『金線池』『拝月亭』『望江亭』『蝴蝶夢』など約 15編で,いずれも口語を巧みに韻文に取入れ,社会の現実を鋭く反映した元曲の代表的作品。

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百科事典マイペディア 「関漢卿」の意味・わかりやすい解説

関漢卿【かんかんけい】

中国,元の戯曲作家。元曲四大家(雑劇)の一人。生没年不明。大都(北京)の人。の遺民で元に仕えた。雑劇創始期の中心人物で,活躍期は13世紀後半から14世紀初頭。性格,心理の描写にすぐれ,ことに女性を描いて卓抜であった。作品は60編のうち18編現存。無実の罪で処刑される若い寡婦を描いた《竇娥冤(とうがえん)》や《救風塵》が代表作。

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世界大百科事典(旧版)内の関漢卿の言及

【中国文学】より

…中国の演劇はもともと喜劇から出発したものらしいが,元曲には悲劇として終結するものはまったくない。戯曲作家として傑出したのは関漢卿(かんかんけい)と王実甫の2人で,ともに14世紀初めに死んだ。関漢卿は多数の作品を公にし,舞台の経験のあった人と思われ,王実甫の名は《西廂記(せいしようき)》によって不朽である。…

※「関漢卿」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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