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散曲 さんきょくSan-qu

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

散曲
さんきょく
San-qu

中国,元,明の歌曲。元代に全盛を示した戯曲元曲」の歌詞の部分と同じ性質をもち,いわば端唄,小唄の類にあたる。もとはから変形したもので,宋,金代の「諸宮調」から大きい影響を受け,既成メロディーに合せて作詞され,宴の場で楽器の伴奏のもとに歌われた。十数種の楽調 (宮調) に短いメロディーが1つだけの「小令」と,同じ楽調の異なるメロディーを組合せる「套数 (とうすう) 」という長編形式とがある。用韻は著しく単純化されて声調の区別すらなくなり,19種の韻類に整理されている。また詞ではごくまれであったメロディーに乗らぬ付加的な歌詞「襯字 (しんじ) 」が大幅に増加され,さらに,やはり詞では部分的であった口語の使用が全面的になっている。戯曲が元代に画期的な盛行をみせたように,散曲も科挙の廃止によって官路への望みを失った元代知識人によって盛んにつくられた。口語を用いたごく初期のジャンルであり,社会の矛盾や人間性の本質をついた傑作を多く生んだが,明代には制作は活発ではあったが生気を失ったものとなった。

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世界大百科事典 第2版の解説

さんきょく【散曲 Sǎn qǔ】

中国の元・明・清3代に行われた歌謡ジャンル。〈〉と同じく既成のメロディに合わせて作詞され,元来は楽器の伴奏のもとに歌われた。単独の短いメロディ〈小令〉と組歌形式〈套数(とうすう)〉があり,後者は同時に行われた歌劇の歌詞部分と性質を同じくし,作者も多く重複する。小令はおおむね〈詞〉の継続ないし亜流として制作鑑賞されたが,元代ではそれらと別に,親近感にとむ音楽や長編形態,簡略化された用韻およびメロディにのらぬ措辞の許容など,新たな条件を利して口語を巧みに駆使し,伝統文学が忌避したテーマや表現をむしろ強調することによって,このジャンルの存在意義を主張する作品を生んだ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

散曲
さんきょく

中国、元(げん)・明(みん)両代に詞(し)を受け継いで現れた新しい長短句形の歌謡文学。唐~宋(そう)代に主として宴席で流行した詞のマンネリ化に対する反発と、モンゴル人経由で輸入された新しい西方音楽の影響による楽曲の変化とがその発生のおもな原因らしい。一曲だけで独立して一つの主題を詠む小令(しょうれい)と、同一宮(曲)調に属するいくつかの曲を組み合わせ、最後に尾声という収束の曲をつけて一つのテーマを詠む套数(とうすう)とがある。元代では7音階を用いる北曲に、明代では主として5音階を基調とする南曲によってつくられたが、元末には南北曲を組み合わせた南北合套も現れた。北散曲が詞と異なる点は、曲牌(はい)(楽曲の様式の題名)のほとんどが単調体の短章であること、入声(にっしょう)の消滅、押韻する場合の平仄(ひょうそく)通押、俗語のより頻繁な使用、より俚俗(りぞく)なテーマの出現、襯字(しんじ)とよばれる句格外の語の使用などがあげられるが、南散曲ではむしろ詞への回帰性が感じられる。作者の多くは戯曲の作者でもあるが、散曲のみの作者も多い。明代では民間の俗謡に優れた作があるが、それらを散曲と称するか否かの定説はない。曲牌の数は、北曲では300種を超え、南曲では800種に達する。句格の説明をした書は、北曲では『太和正音譜』、南曲では『重訂南九宮詞譜』が基礎的である。なお元代の散曲が近年隋(ずい)樹森(じゅしん)によって『全元散曲』にまとめられたように、元人散曲のほうを重視する人が多い。[田森 襄]
『倉石武四郎編・訳『中国古典文学大系20 宋代詞集』(1970・平凡社)』

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世界大百科事典内の散曲の言及

【中国文学】より

…これは元曲中の最長編であり唐代の恋愛物語の演劇化であった。戯曲作家はまた〈散曲〉をも作った。散曲は宋の〈詩余〉に似た俗語の韻文で,歌曲の歌詞である。…

※「散曲」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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