日面通過ともいう。天体が太陽面を横切るように見える現象。通常は内惑星の現象を指す。太陽,内惑星,地球がこの順に一直線に並ぶとき,すなわち,内惑星の軌道の交点付近で内合となったときに起こる。惑星の軌道は安定であるから,起り方はきわめて規則的である。
水星の太陽面通過は,太陽が昇交点を通過する11月10日ごろと,6ヵ月を隔てて降交点を通過する5月8日ごろに起こる。図はそれぞれについて200年間のようすを計算したものである。平行線は太陽面における水星の経路で東→西に進む。数字は年月日(世界時)である。11月と5月のようすが大幅に異なるのは軌道の離心率が大きいためである。11月の水星の見かけの直径は太陽の1/420,太陽の直径を通過するのに要する時間は5.3時間,5月ではそれぞれ1/200,7.6時間である。
観測としては,小型望遠鏡を用いた接触時刻の測定が古くから行われている。S.ニューカムは,E.ハリーがセント・ヘレナ島で行った1677年の観測とそれ以後1881年までの22回の観測記録を解析して,後に一般相対性理論によって予言されることになる近日点の移動の過剰43″/100年を確認している。
金星の太陽面通過については,地球との公転周期の比が3/5に近いために機会が少なく,8年,121.5年,8年,105.5年を一つの群とする周期で,12月7日ごろと6月6日ごろに起こる。最近では1882年12月6日が最後で,次は2004年6月8日にある。この観測は太陽視差の決定に有効であり,1874年12月9日の金星太陽面通過では,アメリカ,フランス,メキシコの観測隊が来日した。これが日本で行われた近代天文観測の初めである。
執筆者:森 巧
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