夫方居住婚(読み)おっとかたきょじゅうこん(英語表記)virilocal residence

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

夫方居住婚
おっとかたきょじゅうこん
virilocal residence

父方居住婚 patrilocal residence,父処婚ともいう。婚後,妻が夫の両親の家ないしはその付近に住む居住慣行は,妻が夫と共住することを意味するばかりでなく,新夫婦が夫の両親の家ないしはその付近に居所を得ることを意味している。さらに,夫の父系成員およびその家族員との密接な関係を招来するし,安定した父系出自集団 (→父系制 ) を形成する条件となる。したがって,土地や家あるいは動産の父系相続とも密接に関係する。 G.P.マードックによれば,250社会のうち夫方居住婚は 146社会に認められ,さらにこれに父系相続を伴うものは 90%近くを占め,両所居住婚を含めた夫方居住婚と父系出自をあわせもつ社会は,58.7%を占めるという。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

夫方居住婚
おっとかたきょじゅうこん

婚姻後の居住規制の一つで、妻が夫の家に移り住む形式をいう。日本の嫁入り婚はこれに入る。日本の場合のように、夫の家とは夫の両親の家であることが多いが、そのほか夫の両親の家の近くや同じ村の中に新しく家を建ててそこに妻を迎える形もしばしばみられる。ただし、男が以前から両親の家から遠く離れた所に住み、結婚後、妻がそれまで夫が住んでいた家に入るような場合は、夫方居住とも新居住ともいえ、あるいは妻の実家が新婚の家に近いときには妻方居住ともいえ、これらの居住様式の厳密な区別はむずかしい。夫方居住のことを、子供がどこで生まれるかという観点から、父方居住ということもある。世界の諸社会で夫(父)方居住はもっとも多くとられている居住様式で、とくに父系社会ではよくみられる。その理由として、夫方居住だと夫は結婚後も自分の親族たちの近くに住み、密接な関係を保ち続けることができるからと考えられる。また、生まれる子供は父系社会では父の財産・地位を相続・継承し、父方の親族集団に所属するので、子は父の家、父方の親族の近くで生まれ育ったほうがなにかと有利である。しかし父系社会で夫方居住婚の場合、嫁入りした女性はよそ者としていろいろ抑圧されることが少なくない。他方、母系社会では比較的に妻方居住が多く夫方居住は少ないが、たとえばアフリカの農耕民アシャンティ人のように母系で夫方居住をとる場合、夫は他に住んでいる姉妹の息子に相続・継承を行い、子は母の実家に住む母の兄弟から相続・継承を受けることになり、複雑な問題が生じる。[板橋作美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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