(読み)けい(英語表記)Xi; Hsi

精選版 日本国語大辞典 「奚」の意味・読み・例文・類語

けい【奚】

  1. 〘 名詞 〙 鮮卑族の一つ。四世紀頃からモンゴル東部のラオハ‐ムレン(老哈河)流域に遊牧

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普及版 字通 「奚」の読み・字形・画数・意味


10画

[字音] ケイ
[字訓] めしつかい・なんぞ

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 象形
卜文の字形は、頭上に髪を結いあげた女子の形。金文にもその図象化した字がある。結髪の形は羌族のそれに近く、辮髪(べんぱつ)を示すものと思われる。羌族(きようぞく)は卜辞捕獲の対象としてみえ、また大量に犠牲とされた。殷墓にみえる数千の断首葬も羌族と考えられ、家内奴隷としても多く使役されたのであろう。〔周礼、天官序官、酒人〕に「奚三百人」、また同じく〔漿人〕に「奚百五十人」など、多数の奚が用いられており、奚の名が残されている。〔説文〕十下に「大腹なり。大に從ひ、(けい)の省聲なり。は籀(ちうぶん)、系の字なり」とするが、奚を大腹の義に用いた例はない。卜辞や〔周礼〕によって、羌系女奴の名が残されていることを知りうるのである。

[訓義]
1. めしつかい、女のめしつかい、女奴、もと羌系の族の俘獲されたものであろう。
2. 大きな腹、ふくれた腹。
3. 何・胡・曷・盍と通じ、「なに」「なんぞ」「いずくんぞ」のような疑問詞・疑問副詞に用いる。

[古辞書の訓]
名義抄〕奚 ナゾ・イヅクゾ/奚爲 イカガ 〔字鏡集〕奚 オホハラ・ナンゾ・イカンゾ・イヅクンゾ

[声系]
〔説文〕に奚声として・谿など十二字を収める。はその鳴き声を写した擬声語・谿は徑(径)の声義と関係があろう。

[語系]
奚・hyeiは同声。卜文の奚をに作る字もあり、奚はもと女奴をいう字であった。また奚を疑問副詞に用いるのは何hai、胡ha、曷hat、盍hapと音の通仮によるもので、このうち何・曷は神に祝してその成就を責める意があり、本来、疑問副詞的な意味をもつ語である。

[熟語]
奚官奚疑奚距奚奚奚吾奚翅・奚奚似奚児奚若奚如奚鼠・奚奴奚童奚毒・奚奚婢・奚落・奚隷・奚蠡
[下接語]
駅奚・跛奚・嬖奚

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「奚」の意味・わかりやすい解説


けい
Xi; Hsi

古代,東部内モンゴルのラオハ川流域にいたモンゴル系と思われる遊牧民族。鮮卑の別種といわれる。4世紀末,北魏以来庫幕 (こばく) 奚として史上に出現,隋以来奚と称された。契丹に西接し,関係が深かった。7世紀中頃唐に服属したが,しばしば反乱を起した。安史の乱ののち唐の退勢に乗じ一時勢力を伸ばしたが,9世紀後半以後,強勢になった契丹に服し,一部は唐についた。 10世紀に契丹がを建てると,これに征服吸収された。唐代には5部に分れていたが,遼代には6部に編成,統制された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「奚」の意味・わかりやすい解説


けい

4世紀ごろから、中国、遼寧(りょうねい/リヤオニン)省のラオハ川流域に遊牧し、シラムレン流域の契丹(きったん)族と隣り合っていたモンゴル系の部族。初めは庫莫奚(こばくけい)とよばれていたが、隋(ずい)以後は奚と略称された。7世紀前半から唐に服属したが、8世紀なかばごろに唐の国力が弱まったのに乗じて勢力を伸ばした。唐代には契丹よりも強勢であったが、10世紀初めに契丹に征服され、その地に奚王府が置かれて支配され、11世紀初めには契丹の遼帝国にまったく吸収された。

[菊池俊彦]

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百科事典マイペディア 「奚」の意味・わかりやすい解説

奚【けい】

東部モンゴリアに4世紀ごろから遊牧していた鮮卑の一族。旧名,庫莫奚(こばくけい)。8世紀後半から勢力を増したが,10世紀契丹(きったん)のに征服・吸収された。

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