( 1 )近世から、主として江戸で用いられた語で、上方では「人置き」といった〔浮世草子・新吉原常々草‐上〕。もとは、「女見(じょけん)」であったと思われる。
( 2 )「女衒」の表記がなされた背景には、「法華経‐安楽行品」の「衒売女色」(女色を衒売する)が関与しているか。
芸娼妓周旋人のこと。遊女の周旋は中世では〈人買(ひとか)い〉がこれを行い,江戸時代には〈人買い〉〈口入れ〉〈桂(慶)庵(けいあん)〉などとよぶ周旋業者がこれを兼ねたが,とくに娼妓を周旋する者を関東では女衒と俗称することがあった。生業上,女の姿形を見ることから〈女見(じよけん)〉といい,それがなまったものというが,確証はない。女衒は遊女屋と特定の関係を結ぶとともに,地方にも連絡網をもち,初めの紹介のほか交換,移譲(鞍替(くらがえ))にも暗躍した。誘拐またはそれに近い手段を用いることも多く,契約成立時には周旋料のほか滞留雑費などを多額に差し引いて暴利を得た。江戸幕府は誘拐や人身売買を禁じていたが,その取締りは不徹底で,1793年(寛政5)には女衒渡世を禁止しながら,すぐに廃令とし,女衒の請判(うけはん)(保証印)の禁止と吉原内居住を義務づけたにとどまった。明治以後も同種の営業人を女衒とよぶことがあった。現在では〈職業安定法〉(1947制定)によって女衒行為は禁じられているが,人身売買ブローカーとしてなお残存している。
執筆者:原島 陽一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
芸妓(げいぎ)・娼妓(しょうぎ)周旋人の東日本での通称。身売り証文に請人(うけにん)(保証人)として連判したので判人(はんにん)ともいう。「衒」は売るの意で、女衒は、商売上女を見ることから女見(じょけん)の転訛(てんか)したものと考えられるが、確証はない。元禄(げんろく)年間(1688~1704)から使われ始め大正時代に及んだ。職業周旋人のうちでとくに女衒が区別されたのは、特殊な営業感覚を要することのほかに、中世の人買い以来の誘拐、詐欺(さぎ)などの犯罪に結び付きやすく、周旋料のほかに水金(みずきん)(就業までの滞在費など)や鞍替(くらが)え(就業先変更)による仲介料などで不当な利益をあげるのを例としたからである。遊女屋と関係をもつのはもちろん、地方にも手先を置いて組織的に活動した。
[原島陽一]
…近世初期以降,都市の発展にともなって出現したもので,とくに江戸に流入する多数の出稼ぎ奉公人に対し,その身元保証,雇入先の斡旋,そして,就職先がきまるまでの宿泊を行う必要があったことから必然的に発生したものと思われる。こうした周旋屋が扱ったのは,おもに武家の下級奉公人である中間(ちゆうげん)や若党(わかとう),一般町家の下男,下女など,1年あるいは半年契約の出替り(でがわり)奉公人であり,芸妓,娼妓などについては,関東で〈女衒(ぜげん)〉と呼んだ専門の周旋人が手がけることが多かった。また,土木工事などに必要な大量労働力の供給は,〈人入れ稼業〉と称して町奴(まちやつこ)が行った。…
※「女衒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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