デジタル大辞泉 「口入」の意味・読み・例文・類語
く‐にゅう〔‐ニフ〕【口入】
1 口を挟むこと。干渉すること。また、その人。口出し。
「法皇去年の冬より政に御―もなく」〈著聞集・三〉
2 間に立って世話をすること。また、その人。仲介。くちいれ。
「跡は火に成る事も構はず、恐ろしき―に書き付けを出し、
3 中世、所領・所職について仲介すること。また、その人。
口出し,干渉,仲介,斡旋といった意味で,古代から近代に至るまで長く使われた言葉。そのうち中世においては,特殊な状況のもとで使われる場合があって,〈口入神主〉〈関東御口入〉といった熟語が生まれた。口入神主とは,伊勢神宮に御厨(みくりや)が設定される際に寄進者との間を仲介した神主のことである。関東御口入とは,鎌倉幕府が荘園領主に対して,御家人を地頭にしてほしいといった申入れをすることをいった。また鎌倉幕府,室町幕府の裁判においては,第三者が訴訟当事者の一方に荷担して運動することがしばしば行われ,これが〈口入〉と呼ばれた。この場合,口入する人間は,訴訟当事者の〈縁者〉だと称するのが常であった。このことは,当時,縁者による訴訟への口入を正当とする社会通念があったことをうかがわせ,日本の中世社会のあり方を考えるうえで興味深い事柄といえる。
執筆者:山本 博也
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(1)言葉をさしはさんだり干渉したりすること。人事や政策,裁判に関して,本来関係すべきでない立場の人物が口を出すのをいうことが多い。「建武式目」にも,「権貴ならびに女性・禅律僧の口入を止めらるべきこと」とある。(2)口添えすること。金銭や土地の売買,荘園の役職を仲介・斡旋すること。鎌倉時代に幕府が荘園の役職につく人物を推薦・斡旋することがあり,その土地を関東御口入地(ごくにゅうち)とよんだ。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…たとえば,謀反人の所領以外での〈地頭のを停止させよ〉とか,寺院の一元的な支配地であるので〈国衙のを止める〉というように。当時,同様の意味をもつ言葉として口入(くにゆう)があったが,口入が主として弁論をもってする,いわば口出し,交渉であり,またその言葉自体には非難の意はこめられていなかったのに対して,はむしろ実力行使をともなう,いわば手出し,干渉であり,その言葉自体に非難の意がこめられていたようである。【山本 博也】。…
※「口入」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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