如何・奈何(読み)いかが

精選版 日本国語大辞典 「如何・奈何」の意味・読み・例文・類語

いか‐が【如何・奈何】

[1] 〘副〙 (「いかに」に助詞「か」の付いた「いかにか」が変化したもの) →いかがは
① (心の中で疑い危ぶむ意を表わす) どう。どのように。どうして。どんなに。
伊勢物語(10C前)二「うち物語らひて、帰り来て、いかが思ひけん、〈略〉雨そほふるに遣りける」
② (反語の意を表わす) どのようにまあ…か。どうしてまあ…か。(そんなはずはない、できないの意となる)
古今(905‐914)物名・四三三「かくばかりあふひのまれになる人をいかがつらしと思はざるべき〈よみ人しらず〉」
③ (軽く尋ねて相手意向を確かめたり、呼びかけてすすめたりする意を表わす) どう。どうか。どうです。
※後撰(951‐953頃)雑一・一〇九六・詞書「ひたたれ乞ひにつかはしたるに、裏なんなき、それは着じとや、いかがといひたれば」
④ (物事程度状態が、はっきり限定できないほどはなはだしい意を表わす強調辞) (はっきり言えないが)どんなにまあ。どれほど。
蜻蛉(974頃)中「さらんのちに物したらんは、いかが人笑へならん」
[2] 〘形動〙
① どのような。どうして。
※談義本・労四狂(1747)下「元もとよりいやしき遊女の事なれば、いかがのこころざしの出来(いでき)なんも知らず」
② (あとに「なり」「で」などの指定辞を伴って用いることが多い) どうかと思われるさま。考えものであること。→いかがしい
十六夜日記(1279‐82頃)「さのみ心弱くてもいかがとて」
[語誌](1)「いかにか」から「いかが」という変化は、「に」の撥音化とそれに並行する「か」の濁音化、すなわち「イカンガ」を媒介にして成立したと考えられる。
(2)一〇世紀初頭の仮名資料に「いかか」が現われ始めるが、この時期はまだn撥音を無表記としており、例えば「土左‐承平五年二月四日」の「しし(こ)」が「死にし(子)」であり、「シンジ(コ)」と発音されていたと推測されるように、同じく「そもそもいかかよむたる」〔土左‐承平五年一月七日〕の「いかか」も「イカンガ」と発音されていたかもしれない。
(3)意味はもとは上代の「いかにか」「いかに」とほぼ同じであるが、平安期以降ほぼ状態や様子に限定されながら、鎌倉期には「その様子が望ましくない、困ったものだ」という意味を派生する(中世後半から近世になると「いかがし」「いかがはし」を派生する)。これに対して、「いかに」は状態・様子以外に理由原因を問う用法が発達する。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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