婚姻を法律的に成立させるための届け。一般には結婚届ともいわれている。結婚式や披露宴をしても、この手続をしないと法的には内縁関係とみなされる。婚姻届用紙は役場に備え付けてあり、まず結婚後夫婦がどちらの氏(うじ)(姓)を称するかを決め、成年の証人2人をたてて、用紙に所要事項(夫婦それぞれの氏名・生年月日、本籍地と筆頭者氏名、結婚直前の職業、父母の氏名と続柄、初婚か再婚か、夫婦の称すべき氏など)を記入し、夫・妻・証人が署名押印する(民法739条、戸籍法74条、戸籍法施行規則56条)。これを夫または妻の本籍地、または居住地の市区町村役場に届け出て、受理された日をもって戸籍に記載される。なお、夫(妻)の本籍地に届け出る場合は婚姻届2通と妻(夫)の戸籍謄本が必要であり、本籍地以外の居住地に提出する場合は婚姻届3通と両人の謄本が必要である。戸籍抄本でもよい。
婚姻届に必要な戸籍謄抄本は、本籍地のある役所の窓口で請求するほか、マイナンバーカードを持っている場合には、コンビニエンスストアにあるマルチコピー機(キオスク端末)で即日交付することが可能である。ただし、事前申請が必要な場合や、対応していない自治体もある。このほか、本籍地が県外などの遠方にある場合や、市外・区が違う場合には、郵送請求で取り寄せることもできる。
なお、2018年(平成30)の民法改正により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられたのにあわせて、女性の婚姻年齢は18歳に引き上げられ、男女の婚姻開始年齢が統一された。これに伴い、未成年者の婚姻はなくなるため、改正法が施行された2022年4月1日以降は、父母の同意書は不要となった。
[高橋康之・野澤正充 2022年4月19日]
(吉岡寛 弁護士 / 2008年)
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… 婚姻の届出に関連して記憶すべき判例が二つある。一つは意識不明中になされた婚姻届は有効かという問題に関する最高裁1969年4月3日の判決であり,他の一つは,当事者の一方(または双方)の知らない間になされた(無効の)婚姻届は追認によって有効になるのかという問題を扱った最高裁1972年7月25日判決である。抽象的に考えると,病気などのため意識不明中になされた婚姻届は,本人が意識のはっきりしていたときに婚姻に合意していたとしても,本人の知らない間の婚姻届であるから無効というほかないけれども,最高裁は,当事者が婚姻合意=届書の作成にいたるまで永年にわたって事実上の夫婦共同生活(内縁)を続けてきていた場合には届書受理時に意識不明の状態にあったとしても,婚姻はそれに影響されずに有効に成立するとしている。…
※「婚姻届」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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