孔子の言行、逸話を集録した書。略して『家語』ともいう。『漢書(かんじょ)』芸文志(げいもんし)の六芸(りくげい)略論語類には、撰者(せんじゃ)不明の『孔子家語』27巻が記載されている。原書はつとに亡失したようで、10巻44編からなる現行本は、三国魏(ぎ)の王粛(おうしゅく)の偽作。王粛の偽作の意図は、もっぱら後漢(ごかん)の鄭玄(じょうげん)の学説を反駁(はんばく)するための根拠の造作にある。このことは、すでに唐・宋(そう)以来、学者の知るところであるが、この書は、古事や遺説を多く収めているという点から、案外広く読まれてきた。現行本の文章の大半は、『左伝』『国語』『孟子(もうし)』『荀子(じゅんし)』『大戴礼記(だいたいれいき)』『礼記(らいき)』などの古籍に重見する。したがって、この書は古籍の文辞の校訂の一資料に供しうる。
[伊東倫厚]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…《周易》《毛詩》《礼記(らいき)》を始めとする多くの経書に注釈を施し,大儒と仰がれた。孔子の言行を記す《孔子家語(こうしけご)》10巻は,彼の偽作とされる。また《偽古文尚書》を彼の名に帰する説もある。…
…《偽古文尚書》の出現がその典型例となろう。魏の王粛一派は,後漢以来勢力をもっている鄭玄(じようげん)の学説を打ち破るべく,自派に都合のよい《孔子家語(けご)》《孔叢子(くぞうし)》などの仮託の書を偽造した。皇甫謐(こうほひつ)《帝王世紀》も,これは偽書とは呼ばぬが,王粛一派の学説によって書かれた古代史である。…
※「孔子家語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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