鄭玄(読み)テイゲン

デジタル大辞泉 「鄭玄」の意味・読み・例文・類語

てい‐げん【鄭玄】

[127~200]中国、後漢の経学者。高密(山東省)の人。あざなは康成。今文古文両派の経学を広く学び、馬融ばゆうに師事。党錮とうこの禁に遇ってからは蟄居ちっきょして経典の注釈に専念。漢代経学を集大成し、訓詁学の大家となった。「毛詩鄭箋」「三礼注」ほか多くの著がある。じょうげん。

じょう‐げん〔ヂヤウ‐〕【鄭玄】

ていげん(鄭玄)

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精選版 日本国語大辞典 「鄭玄」の意味・読み・例文・類語

じょう‐げんヂャウ‥【鄭玄】

  1. ( 「ていげん」とも ) 中国、後漢の学者。字(あざな)は康成。山東高密の人。馬融に師事して訓詁注釈にはげみ、その著百余万言という。漢代経学を集大成し、易・書・詩をはじめ主な経書に注したが、特に三礼の注は重んぜられる。著に「六芸論」「駁五経異義」など。(一二七‐二〇〇

鄭玄の補助注記

古くから「じょうげん」と呼びならわされており、「毛詩抄‐一」に「鄭氏箋、書ではテイゲンとよみ候。只口で云時はヂャウゲンぞ」とある。


てい‐げん【鄭玄】

  1. じょうげん(鄭玄)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鄭玄」の意味・わかりやすい解説

鄭玄(じょうげん)
じょうげん
(127―200)

中国、後漢(ごかん)の経書学者。「ていげん」ともいう。字(あざな)は康成。北海国高密(こうみつ)県(山東省高密県南西部)の人。下層士族で、幼少より学を好み、地方の税吏となるが辞し、40歳まで洛陽(らくよう)・長安(ちょうあん)を中心に遊学を続けた。第五元先(だいごげんせん)、張恭祖(ちょうきょうそ)、馬融(ばゆう)らに師事し、今文(きんぶん)・古文の経学、緯書(いしょ)、暦数などを広く学び、帰郷後は経書の注釈作成に専念した。党錮(とうこ)の禁に座し、無官のまま、後漢末の動乱を民間の学者として生き抜いた。完存する著述は、『周礼(しゅらい)注』『儀礼(ぎらい)注』『礼記(らいき)注』(『三礼注』と総称。礼学の最大の権威となる)と『毛詩箋(せん)』の4種。ほかに『周易(しゅうえき)』『尚書』『尚書大伝』『論語』『孝経』や緯書、律令に注をつけ、経学総論の『六芸(りくげい)論』、他学者の説を批判した『駁(ばく)五経異義』、『発墨守(はつぼくしゅ)』『箴膏肓(しんこうこう)』『起廃疾(はいしつ)』を著したが、散逸した。集逸書に孔広林の『通徳遺書所見録』などがある。彼の経学は、古文学を基礎として、今文・古文の諸家の説を総合し、両漢経学を集大成した「鄭学(ていがく)」として盛行した。経書間の矛盾調停、厳密な本文批判、周辺諸分野の知識の活用に意を注ぎ、歴史的発展形而上(けいじじょう)的枠組みのなかで、経学に体系性を与えることを目ざしていたようであるが、そのために緯書を利用したことは、後世の批判を招いた。もっとも高名な訓詁(くんこ)学者であり、とくに清朝(しんちょう)考証学者たちからは、許慎(きょしん)と並んで尊崇を受けた。

[高橋忠彦 2016年1月19日]

『大川節尚著『三家詩より見たる鄭玄の詩経学』(1937・関書院)』『藤堂明保著「鄭玄研究」(蜂屋邦夫編『儀礼士昏疏』所収・1986・汲古書院)』『王利器著『鄭康成年譜』(1983・斉魯書社)』『張舜徽著『鄭学叢著』(1984・斉魯書社)』



鄭玄(ていげん)
ていげん

鄭玄

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改訂新版 世界大百科事典 「鄭玄」の意味・わかりやすい解説

鄭玄 (じょうげん)
Zhèng Xuán
生没年:127-200

中国,後漢の学者。字は康成,北海高密(山東省)の人。洛陽に遊学して太学で第五元の教えをうけ,また東郡の張恭祖について学び,さらに馬融に7年間師事し,郷里に帰ったときは40歳をすぎていた。清貧をよしとして,農業を営みながら諸生に教授したという。その学徳を慕って来たり学ぶ者は1000人に達している。権勢には近づかず朝廷や貴戚の徴召を断ってひたすら研究に専念した〈純儒〉である。

 漢代経学の集大成者であり,すこぶる業績にとむ。しかし独自の新説には乏しく,功績は組織的な計画のもとに諸説を折衷した,いわば整理事業にある。不思議なことに,権力をかたくなに避けた高潔な人格であるのに,その経書解釈には,支配階級のイデオロギーが色濃くただよう。彼の注釈した三礼(《周礼(しゆらい)》《儀礼(ぎらい)》《礼記(らいき)》)が東晋以後学官に立てられ,絶対的な支持をえたことはその傍証となろう。《詩経》の注も,宋の朱子の新注が現れるまで,10世紀の間,唯一の権威ある注釈とされた。このほか《周易》《尚書》《論語》《孝経》など,ほとんどすべての経伝に注釈を施し,《六芸論》《駁五経異義》などを著し,精緻で該博な〈兼綜の学〉そのものである。その本領は礼にあり,三礼の注は心血をそそいだ力作であるが,《周礼》を中心に《儀礼》《礼記》を関連させ,学説を調和して,礼の強固な体系化をはかっており,〈礼は是れ鄭学〉とさえ称される。
執筆者:


鄭玄 (ていげん)

鄭玄(じょうげん)

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百科事典マイペディア 「鄭玄」の意味・わかりやすい解説

鄭玄【じょうげん】

中国,後漢の学者。〈ていげん〉とも読む。馬融などに師事して経学を学ぶ。黄巾(こうきん)の乱に連座して10余年の禁錮を受けた。その後は隠遁(いんとん)して著述に専心し古文学を確立,漢代経学の今文・古文の対立を統一的に集大成した。著は《易》《書》《詩》などの注,《六芸論》など数多く,訓詁(くんこ)にすぐれている。
→関連項目古注

鄭玄【ていげん】

鄭玄(じょうげん)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鄭玄」の意味・わかりやすい解説

鄭玄
じょうげん
Zheng Xuan

[生]永建2(127).北海,高密
[没]建安5(200)
中国,後漢の学者。「ていげん」とも読む。宋代の朱子と並ぶ経学の大成者。字は康成。若年,下級の官吏となったが,のち太学に進み,また馬融らに学んだ。「党錮の禁」に連座して 10年間獄につながれ,その後,生涯仕えずに学問に専念した。古文学の立場をとり,今文学派と論争したが,今古文を兼修し,ほとんどすべての経書と主要な緯書とについて,本文を校定し,統一的見地を立てて,訓詁を明らかにした。多くは散逸したが,『論語注』『周礼注』『儀礼注』『礼記注』『毛詩鄭箋』が伝わっており,現在でも経書研究のよりどころになっている。諸書に残存する説を集めたものに『鄭玄佚書』がある。

鄭玄
ていげん

鄭玄」のページをご覧ください。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「鄭玄」の解説

鄭玄(じょうげん)
Zheng Xuan

127~200

後漢の文献学者。高密(山東省高密県)の人。馬融(ばゆう)に師事。古文を主として,今文(きんぶん)・古文の諸説を折衷統一し,訓詁学(くんこがく)上偉大な功績を残した。代表作『三礼注』『毛詩鄭箋』。


鄭玄(ていげん)

鄭玄(じょうげん)

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旺文社世界史事典 三訂版 「鄭玄」の解説

鄭 玄
じょうげん

127〜200
後漢 (ごかん) の儒学者
山東の人。馬融 (ばゆう) に師事。仕官をさけ,民間の学者として儒学経典の研究に努力。当時の諸学派を集大成し,古典解釈の功績は右に出るものがなく,清代の考証学に引きつがれた。

鄭 玄
ていげん

じょうげん

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367日誕生日大事典 「鄭玄」の解説

鄭 玄 (てい げん)

生年月日:127年7月5日
中国,後漢の学者
200年没

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世界大百科事典(旧版)内の鄭玄の言及

【鄭玄】より

…中国,後漢の学者。字は康成,北海高密(山東省)の人。洛陽に遊学して太学で第五元の教えをうけ,また東郡の張恭祖について学び,さらに馬融に7年間師事し,郷里に帰ったときは40歳をすぎていた。清貧をよしとして,農業を営みながら諸生に教授したという。その学徳を慕って来たり学ぶ者は1000人に達している。権勢には近づかず朝廷や貴戚の徴召を断ってひたすら研究に専念した〈純儒〉である。 漢代経学の集大成者であり,すこぶる業績にとむ。…

【許慎】より

…著書に《五経異義》10巻があるが,すでに滅んだ。ただ同じ後漢の鄭玄(じようげん)に《駁五経異義》の著があり,これも滅んだが,許慎の説をあげて反駁する形をとっているため,逸文によって両者の説の一斑をうかがうことはできる。《説文解字》15編は,漢字の字形からの分析を体系的に行った最古の字書である。…

※「鄭玄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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