季節社(読み)きせつしゃ(英語表記)Société des Saisons フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「季節社」の意味・わかりやすい解説

季節社
きせつしゃ
Société des Saisons フランス語

1837年、フランスの過激共和主義者ブランキバルベス、マルタン・ベルナールらによって組織された革命秘密結社前身はほぼ同じ指導者をもち、七月王政政府によって弾圧、解体された「家族社」Société des Familles。このときの失敗の経験から、内通内紛を防ぐため極端な秘密主義と規律主義をとった。末端組織は7人メンバーの「スメーヌ(週)」とよばれる組織で、「ディマンシュ(日曜)」とよばれる1人のリーダー以外は相互に顔を知らぬ仕組みになっている。四つの「週」が「モア(月)」を、三つの「月」が「セゾン(季節)」を、四つの「季節」が「アンネー(年)」を構成、「革命アジャン(首謀者)」とよばれる少数の指導者がピラミッド頂点にたつ。各段階の組織は、「週」と同じく1人のリーダーしか会員に顔を知られず、すぐ下級のリーダーにしか直接指令を発することができない。密告があっても被害を最小限にとどめるためである。1839年5月12日、おりからの経済危機による大衆の不満と内閣の政治危機に乗じ、結社は権力奪取を目ざす武装蜂起(ほうき)を強行、一時パリ市庁舎の占拠に成功したが、たちまち軍隊に包囲され、翌日完全に鎮圧された。バルベス、ベルナールはその場で逮捕され、ブランキは逃走に成功したが、10月、地方で逮捕された。3人とも裁判で死刑を宣告されたが、ほどなく無期投獄に減刑され、組織は解体した。この暴動は、ブランキ主義の少数精鋭による一揆(いっき)主義の限界と欠陥を暴露したといえる。七月王政はこれを機として安定期に入った。

[桂 圭男]

『Maurice Dommanget, Auguste BlanquiDes origines à la Révolution de 1848 (1969, Mouton, Paris)』『オギュスト・ブランキ著、加藤晴康訳『革命論集 上』(1967・現代思潮社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「季節社」の意味・わかりやすい解説

季節社 (きせつしゃ)
Société des Saisons

フランスの秘密結社。1830年代,七月王政下のフランスでは,議会内外の共和主義者による自由主義的改革運動と,ストライキを中心とした労働大衆の運動や蜂起が頻発し,人間の権利協会のように,一部には両者の連帯の組織化も生ずる。これに対し政府は,抑圧の強化をもってのぞみ,反体制運動と組織の壊滅を行った。こうした状況を前提に組織されたのが季節社である。バブーフの平等主義とブオナローティの秘密結社運動の伝統にたつ革命家ブランキ,およびバルベスとマルタン・ベルナールMartin Bernard(1808-83)の3者を中心に37年に結成され,その加盟者は600ないし1000名の間と見積もられている。39年5月には武装部隊で市庁舎を一時的に占拠したが,正規軍に敗れ,組織は壊滅した。しかし,少数前衛の武装蜂起と民衆の呼応による革命権力の樹立,それをてことした社会革命の実現という季節社の考え方は,カベのイカリア運動の対極として,その後の革命運動の重要な一潮流をなす。
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デジタル大辞泉プラス 「季節社」の解説

季節社

フランスで1837年に組織された革命秘密結社。ブランキ、バルベス、マルタン・ベルナールの3名を中心に結成。1839年に武装蜂起を決行するも失敗、指導者らは逮捕され組織は解体した。「季節協会」「四季協会」などともいう。

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世界大百科事典(旧版)内の季節社の言及

【バルベス】より

…民衆の解放のためには,まず革命結社による政治権力の奪取が必要と考え,共和主義運動に身を投じ,結社〈人間の権利協会〉に加入したが,34年に結社が弾圧されると〈家族社〉という秘密結社を組織,36年火薬製造の罪に問われ,ブランキらとともに逮捕された。釈放後37年末には再び〈季節社〉をブランキやマルタン・ベルナールと結成し,39年5月パリで蜂起したが失敗に終わり,投獄された。48年,二月革命により釈放されると,パリで〈革命クラブ〉を組織し,ブランキと対立したが,第12区の国民軍の軍団長に当選し,憲法制定議会の議員にも当選した。…

※「季節社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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