改訂新版 世界大百科事典 「学習制御」の意味・わかりやすい解説
学習制御 (がくしゅうせいぎょ)
learning control
人間は学習能力をもっており,ある作業を何度も実行しているとしだいにその作業に上達してくる。機械の場合にも,人間の場合と同様に,なんらかの学習能力をもつものが作れれば便利であり,種々の分野で研究が行われている。その機械がとくに制御装置であり,作業内容が制御である場合を学習制御と呼んでいる。
学習の具体的な内容については制御工学の分野においても明確な定義がなく,広義に解釈すれば,制御能力をしだいに向上させていくなんらかの機能が組み込まれていればすべて学習制御であると考えることもできる。
もっとも簡単な実例としては,迷路を通りぬける機能をもつ機械が作られている。この機械は迷路のなかである方向を選択しては,その方向で通過できるかを試行する。したがって,第1回の通過に成功するまでにはひじょうに時間がかかるが,一度通過に成功すると,それまでの動作から正しい経路を構成する能力をもっているので,第2回目には一気に迷路を通過することができる。また,プラントの制御において,制御装置内のパラメーターを試行錯誤により調整して,プラントの生産量が最大になるよう制御していく方式についても研究が行われている。
現在の段階では,学習と呼ぶにはあまりに単純すぎるともいえるが,一つの研究目標として学習制御という用語が使われているのである。
執筆者:森下 巌
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報