宗像氏事書(読み)むなかたしことがき

改訂新版 世界大百科事典 「宗像氏事書」の意味・わかりやすい解説

宗像氏事書 (むなかたしことがき)

宗像大社前大宮司宗像氏盛によって,1313年(正和2)正月9日に制定された宗像神社領支配のための基本的法規。全文13ヵ条より成る。神事・仏事の興行・勤行,諸社・寺堂の修造・修理,勧農以下所務・雑務については,これをさかのぼる50年ほど前の1259年(正元1)2月8日に《大札》と称する基本法規が制定発布されており,この事書はこの《大札》を前提とし,それを補うものとして制定されたものである。氏盛は前年の1312年10月9日に幼少の嫡子松法師丸(氏範)に大宮司職以下の所領所職を譲与しており,大宮司の交替,宗像社の幕府直領化による年貢の増加という重大事態に対応するためこれを制定した。宗像氏による領内支配の統制強化を目的としたもので,鎌倉時代後期の在地領主法として重要。また武家家法の先駆的性格を有している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宗像氏事書」の意味・わかりやすい解説

宗像氏事書
むなかたしことがき

筑前国(ちくぜんのくに)宗像神社の社領支配に関する基本法規。全1巻。1313年(正和2)正月9日、同社の社領支配を目的として、前大宮司(さきのだいぐうじ)宗像氏盛(うじもり)により制定された。同氏の社領支配の実態とその詳細を知ることができる、中世期社領支配に関する最重要史料の一つ。全13か条からなり、厳格な年貢の徴収や、「内談衆(ないだんしゅう)」とよばれた同社の有力者による合議制に関する記述が明記されるなど、鎌倉期における九州方面の在地領主制の実態を伝える貴重な資料でもある。刊本佐藤進一・池内義資・百瀬今朝雄編『中世法制史料集』第3巻(1965・岩波書店)、読み下しならびに注釈石井進他校注『中世政治社会思想』(1972・岩波書店)所収。

[佐多芳彦]

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