ブーバー(読み)ぶーばー(英語表記)Martin Buber

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブーバー」の意味・わかりやすい解説

ブーバー
ぶーばー
Martin Buber
(1878―1965)

ウィーン生まれのユダヤ思想家。フランクフルト大学名誉教授を経て、1938年以後エルサレム大学教授。中世ドイツ神秘主義思想の影響を受けるとともに、18、19世紀に東ヨーロッパのユダヤ人に広まったハシディズムの神秘思想の復興に尽くし、またヘブライ語聖書のドイツ語訳を行った。宗教的、文化的シオニストととして、ユダヤ・アラブ両民族の共存に努めた。彼の思想の根本は対話の思想にある。彼によると、人間がとりうる態度ないし関係には、我=汝(なんじ)の関係と我=それの関係があり、後者は人間と物、主体と客体のような対象化と利用の関係であるが、前者人格と人格、主体と主体の相互的関係であり、この出会いないし対話において人間は真の人格として現れる。さらにこの対話的関係は人間と永遠の汝としての神との間にみいだされ、こうして完全な我=汝の関係は直接に神と結び付くことによって実現されるとした。著書『我と汝』(1923)など。

[千田義光 2018年4月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ブーバー」の意味・わかりやすい解説

ブーバー
Buber, Martin

[生]1878.2.8. ウィーン
[没]1965.6.13. エルサレム
オーストリア生れのユダヤ系宗教哲学者,社会学者。対話の哲学の代表者。ウィーン,ベルリンなどの大学で哲学,美術史を学んだのち,ユダヤ教関係の雑誌の編集,翻訳の仕事にたずさわった。 1923年フランクフルト大学教授,33年ナチスにより退職させられ,38年エルサレムのヘブライ大学教授。彼の対話の哲学は,我と汝の関係を基本とし,神は永遠の汝であるとされた。社会学的には,空想的社会主義の立場に立つ。またハシディズムの紹介,翻訳に多大の貢献をした。主著『我と汝』 Ich und Du (1922) ,『人間という問題』 Das Problem des Menschen (43) ,『ユートピアの道』 Pfade in Utopia (47) ,『対話的原理論文集』 Die Schriften über das dialogische Prinzip (54) 。

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