(読み)カン

デジタル大辞泉 「官」の意味・読み・例文・類語

かん【官】[漢字項目]

[音]カン(クヮン)(呉)(漢) [訓]つかさ
学習漢字]4年
公の機関。政府。「官選官庁官立半官半民
公の仕事。役目。「仕官退官任官免官猟官
役人。「官吏宦官かんがん技官警官高官上官神官属官長官武官本官裁判官地方官
身体の働きをつかさどる部分。「官能感官器官五官
[名のり]おさ・きみ・これ・たか・のり・ひろ
[難読]長官かみ判官ほうがん次官すけ

かん〔クワン〕【官】

国の政務を執行する機関。朝廷・政府など。役所。おおやけ
「―も商売上手やが」〈上司太政官
役所における職務・地位。また、それをつかさどる人。役人。官吏。「に就く」「を辞す」
太政官だいじょうかん」の略。
[類語]政府行政府政庁政権内閣台閣官府官庁官衙かんがくにおおやけかみ

つかさ【官/司】

役所。官庁。「陰陽おんみょうの―」
「―にも許し給へり今宵のみ飲まむ酒かも散りこすなゆめ」〈・一六五七〉
役人。官吏。「国の―」「こおりの―」
「近き所々の御庄みさうの―召して」〈・須磨〉
官職。また一般に、職務。「内侍ないしの―」
「近衛の中将を捨てて申し賜はれりける―なれど」〈・若紫〉

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精選版 日本国語大辞典 「官」の意味・読み・例文・類語

つかさ【官・司・長・首】

  1. 〘 名詞 〙
  2. ( 長・首 ) おもだったもの。主要なもの。また、主要な人物。首長。おさ。
    1. [初出の実例]「吾児(こ)の宮(みや)の首(ツカサ)は即ち、脚摩乳(あしなつち)、手摩乳(てなつち)なり」(出典:日本書紀(720)神代上(兼方本訓))
    2. 「古よ 今の現(をつつ)に 万調(よろづつき) 奉る都可佐(ツカサ)と 作りたる そのなりはひを」(出典:万葉集(8C後)一八・四一二二)
  3. 役所。官庁。大宝令の制では、省・台・職・坊・寮・署・監・府・使・庁などの名称がつく役所の総称
    1. [初出の実例]「官にも許し給へり今夜のみ飲まむ酒かも散りこすなゆめ」(出典:万葉集(8C後)八・一六五七)
    2. 「助、つかさのつかひにとて、祭にものすべければ」(出典:蜻蛉日記(974頃)下)
  4. 宮廷につかえている人。官人。役人。つかさびと。
    1. [初出の実例]「是の時に国中に事無くして吏(ツカサ)其の官に称ふ」(出典:日本書紀(720)仁賢八年一〇月(図書寮本訓))
    2. 「ちかき所所の御庄のつかさめして」(出典:源氏物語(1001‐14頃)須磨)
  5. 朝廷から任じられる官職。また、単に、役目、つとめ。
    1. [初出の実例]「天皇厚く野見の宿禰の功(いさをしき)を賞(ほ)め給ひて亦鍛(かたし)所を賜ふ即ち土部の職(ツカサ)に任けたまふ」(出典:日本書紀(720)垂仁三二年七月(熱田本訓))
    2. 「除目につかさ得ぬ人の家」(出典:枕草子(10C終)一三九)

かんクヮン【官】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 国家、政府、朝廷など、「私」に対する「公」。
    1. [初出の実例]「官に汝を召す。速に可参し」(出典:今昔物語集(1120頃か)九)
  3. 国の政務や事務を担当する機関。役所。官庁。官衙(かんが)。また、そこにつとめる人。官吏。
    1. [初出の実例]「艷年従官陪層秘、華髪辞栄返故郷」(出典:文華秀麗集(818)中・奉和傷野女侍中〈藤原冬嗣〉)
  4. 特に太政官(だいじょうかん)の略。
    1. [初出の実例]「其臨時祭祝詞、所司随事脩撰、前祭進官経処分、然後行之」(出典:延喜式(927)八)
  5. 国の政務を担当する職務。官職。役目。
    1. [初出の実例]「爵我空崇品、官誰只備員」(出典:菅家後集(903頃)叙意一百韻)
  6. 国の政務を担当する時の地位。官位。位。
    1. [初出の実例]「Icquan(イックヮン)」(出典:日葡辞書(1603‐04))
  7. 人の耳、目、鼻、口などの働き。五官。
    1. [初出の実例]「耳は司庁の官(クヮン)なり」(出典:造化妙々奇談(1879‐80)〈宮崎柳条〉五)

がんグヮン【官】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「はんがん(判官)」または「ほうがん(判官)」の略からか )
  2. 遊里金銭を多く使って豪遊する客。大尽(だいじん)異称
    1. [初出の実例]「シテシテ様子は・官の御短慮聞く牽頭(たいこもち)」(出典:雑俳・智慧くらべ(1868))
  3. 特に、大坂の遊郭で、たいこもちの異称。〔随筆羇旅漫録(1802)〕

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普及版 字通 「官」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] カン(クヮン)
[字訓] つかさ・つかさどる

[説文解字]
[甲骨文]
[金文]

[字形] 会意
宀(べん)+(たい)。〔説文〕十四上に「の君に事(つか)ふるなり。宀に從ひ、に從ふ。ほ衆のごときなり。此れ師と同なり」という。〔説文〕十四上について「小さき(をか)なり。象形」、すなわち阜の小なるものとしており、これを師衆の意とするのはその解と合わない。は軍が出行するときに携える肉の象。軍社に祀って、その祭肉である肉を保護霊として携行する。駐屯地ではこれを置して束茅の類を立て、(し)という。駐留の地には屋舎を設けてこれを祀り、官という。のちの館の初文で、将軍の居る所である。(吏)は史祭のために派遣される祭の使者で祭祀官。官は軍官。軍を分遣するときその祭肉を頒(わか)ち、凱旋して帰るときにも肉を奉ずるので、(遣)・歸(帰)はに従う。卜辞・金文では、を師・の字に用いる。

[訓義]
1. つかさ、つかさびと、つかさどる。
2. やくしょ、やくにん、おおやけ。
3. きみ、ちち。
4. 五官、官能。
5. 館と通じ、やかた。

[古辞書の訓]
名義抄〕官 ツカサ・オホヤケ・キミ・ミヤツカサ・ミヤツカヘ/下官 シモベ 〔字鏡集〕官 ツカフ・ツカサドル・スサマシ・ツカヒツル・ツカマツル・ツカフ・ミヤツカヘス・オホヤケ・キミ

[部首]
〔説文〕部に(げつ)・官の二字を属する。の初文。は軍中の懸係した肉に、大きな曲刀である辛を加えてその肉を削りとる形。軍中に災厄をもたらすことを示し、(げつ)の初文。(追)・・歸・師・帥などの従うは、小さい阜の象ではなく、軍将が携行する軍社の祭肉の象であり、本来部に従うべき字である。

[声系]
〔説文〕に声として歸・・帥・師をあげ、なお(つい)声・歸(き)声の字がある。師はの初文。他はみな会意の字である。

[熟語]
官娃・官位・官医・官印・官・官員・官運・官塩・官屋・官暇・官家・官衙官廨・官階・官街・官官学官宦官閑官銜・官紀・官規官騎官妓・官休・官級・官給・官挙・官勲・官軍・官刑・官計・官・官欠・官健・官絹・官戸・官告・官拘・官誥・官斛・官獄・官差・官司・官子・官仕・官試・官寺・官次・官事・官舎・官社・官守・官所・官書・官商・官賞・官上・官場・官職・官箴・官人・官制・官政・官籍・官船・官・官租・官荘・官曹・官族・官属・官粟・官宅・官治・官地・官秩・官茶・官鋳・官庁・官長・官牒・官廷・官邸・官亭・官第・官程・官田・官途・官斗・官徒・官奴・官帑・官当・官等・官道・官能・官板・官班・官飯・官婢・官費・官品・官府・官布・官賦・官物・官兵・官簿・官俸官民・官役・官吏・官吏・官理・官侶・官寮・官僚・官廩・官暦・官列・官路・官禄・官話
[下接語]
医官・官・塩官・閹官・王官・下官・仮官・衙官・解官・学官・楽官・宦官・寒官・諫官・貴官・器官・技官・九官・旧官・休官・求官・居官・馭官・教官・郷官・軍官・刑官・京官・警官・兼官・五官・候官・校官・高官・曠官・左官士官・尸官・仕官・史官・祠官・徙官・守官・儒官・女官・除官・小官・上官・冗官・稷官・職官・世官・清官・銭官・選官・俗官・族官・大官・退官・代官・治官・長官・朝官・田官・都官・同官・内官・任官・農官・拝官・官・売官・判官・卑官・罷官・微官・百官・服官・文官・兵官・補官・法官・本官・免官・冶官・訳官・幼官・官・理官・猟官・僚官・伶官・冷官・歴官・郎官

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【官僚制】より

…官僚制ということばは多義的で,能率的な組織をさすこともあれば逆に組織の非能率をさすこともあり,また専門官吏による行政をさすこともあればこれら専門官吏が権力を掌握している状態をさすこともある。これは官僚制現象自体の動的な性格,構造によるもので,この点を理解すればその意味を整合的に説明することも困難ではない。…

【胥吏】より

…中国,とくに唐・宋以後官僚機構を実際に支えた事務処理者の総称。〈胥〉とは《周礼(しゆらい)》では庶人が官司に出て使役される者をいう。…

【宋】より

…つづく太宗は,太祖の諸政策を継承するとともに,さらにいっそう強化して,宋朝の基盤をかためた。なかんずく,科挙の門をひろげて大量の知識人層を官僚に登用したことは,士大夫階級が政治,社会の指導層として進出する道を開くことになった。 宋朝は中国統一によって国内の平和と繁栄をもたらしたが,対外的にはつねに周辺の新興国家の圧迫をうけた。…

【中国】より


[政治機構――封建と郡県]
 中国の文明はしばしばローマのそれにくらべられ,政治的文明と称せられる。たしかに両者は,多くの少数民族をも含む非常な広域,いわゆる〈天下〉が,中央政府より派遣する官吏によって統一的に統治せられた点で似ている。しかし中国の場合は周囲に先行する高度の文明をもたず,いわば独力で,すこぶる整備した政治機構を作りあげたのである。…

※「官」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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