日本大百科全書(ニッポニカ) 「実践記録」の意味・わかりやすい解説
実践記録
じっせんきろく
教師が自らの行った教育実践の過程を振り返り、自己の指導とかかわらせて子供の変化・発達の様態を事実に即してリアルに書きつづったものをいう。
実践記録には、(1)教師の指導とかかわらせて子供の生活や生きる姿の変化、発達をリアルに描き出した、生活記録的な手法によるもの(『山びこ学校』1951年など)、(2)学校の教育の全体を、授業改造を軸にしながら変える努力を記した学校単位の実践記録、(3)新しい教育内容・教材の指導体系づくりや新しい教育方法の導入とその実証を中心とした教科ごとの実践記録、(4)自己の教育実践の向上を願って苦闘を続けた記録としてのものなど、さまざまある。
実践記録は、記録する教師にとって、日常の教育実践を点検・反省するのに役だつばかりでなく、これを読む他の教師に、充実した教育実践への意欲を沸き立たせ、同質の教育実践をその読者の教室につくりだすことを可能にする。また、実践の事実に忠実な客観的な記録は、教育実践を分析し、一般的な原理や法則をみいだしていくための資料ともなる。実践記録の書き方は、なんのために書くかによって異なるが、根底には、優れた教育実践を生み出そうとする志気がみなぎっていなければならない。また、教育実践を正しく深くとらえる目も重要である。実践記録は、読者に深くとらえられることによって、いっそう生きてくるのであり、その読み方もまた重要である。
[大槻和夫]
『中内敏夫・永野重史他著『教育実践記録の書き方』(1971・明治図書出版)』▽『坂元忠芳著『教育実践記録論』(1980・あゆみ出版)』