4個の弦楽器で合奏する演奏形態。18世紀後半以後見られる室内楽の一形態で,ふつうバイオリン2,ビオラとチェロ各1を用い,その楽曲を弦楽四重奏曲という。一般にテンポの速めのソナタ形式による第1楽章,テンポの緩徐な第2楽章,メヌエットあるいはスケルツォの第3楽章,再びテンポの速い第4楽章からなるが,中間2楽章が入れ替わることもしばしばあり,この4楽章構成も絶対的なものではない。弦楽四重奏の起源は,18世紀の音楽様式の大きな変化全体と関係しており,一概に特定できない。しかし1750年代末のハイドンの作品はこのジャンルの先駆となった。そして70年代前後から,ハイドン,ボッケリーニ,モーツァルトらの作品によって,古典派様式の生成とともに,この演奏形態,曲種,様式は本格化する。ハイドンが残した68曲の作品は,このジャンルの最初の金字塔であった。ほぼ同じ時期に,主としてスペインでボッケリーニは91曲の作品を書いている。彼は3楽章あるいは2楽章構成を好んで用いたが,このタイプは一般化しなかった。それに対して70-90年に26曲を書いているモーツァルトは,73年後半以後はハイドンと同様の楽章配列をとるようになり,また多くの作曲家も類似の形式を用いた。この過程で弦楽四重奏は,バロック時代の合奏音楽の諸形態に代わるものとして新しく登場したさまざまな古典派の室内楽の諸形態のなかでも,とりわけ作曲される機会の多い曲種となり,ベートーベンをはじめ,20世紀前半までの作曲家において,室内楽の王者としての地位を占めた。音域が異なる四つの同系統の楽器によって得られる調和のとれた響き,それによって可能となる抽象的で内省的な表現,などといったことが,その時代に弦楽四重奏が好まれた理由としてあげられよう。
執筆者:大崎 滋生
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第1、第2バイオリン、ビオラ、チェロの四つの弦楽器による室内楽。さまざまな室内楽編成のなかでももっとも調和のとれた響きと豊かな表現力を備えており、古典派時代に近代の室内楽の中心をなす曲種として完成された。形式的には交響曲と同じく四つの楽章からなり、弦楽四重奏のためのソナタといえる。曲種としての特徴は、「4人の理性的な人間の対話」(ゲーテ)と評されるように、個としての独立性を有する四つの楽器が対話風に楽想を発展させるところにある。
複雑な前史をもつが、古典的な四重奏様式は、68曲を残したハイドンによって確立された。1781年の「作品33」が完成段階を告げる作品とされる。モーツァルトは23曲を残しており、「作品33」に触発されて書いた「ハイドン四重奏曲」を含む最後の10曲で内容的な深さを追究した。ベートーベンの17曲、なかでも思索的な気分をたたえた後期6曲は、この曲種で前人未踏ともいえる高みを築いている。ロマン派時代には、創作の中心からはやや後退したものの、シューベルト、シューマン、ブラームスと古典派の流れをくむ作曲家に伝統が受け継がれ、またスメタナやドボルザークが民族色豊かな作品を残した。その後、19世紀末から20世紀前半にかけて、弦楽四重奏曲はふたたび重要性を増し、ドビュッシー、ラベル、シェーンベルク、ヤナーチェクら多数の作曲家の手で、それぞれ特色ある作品が生み出された。なかでも、バルトークの6曲とショスタコビチの15曲は、ベートーベンの精神を現代に受け継ぐ重要作とされる。
[大久保一]
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…その中心は弦楽合奏であり,奏者の数によって三重奏,四重奏,五重奏などと呼ばれ,かつ特徴ある楽器が明示された。すなわち,弦楽器のみの四重奏は弦楽四重奏,それにピアノが加わった場合にはピアノ五重奏,などという。また,管楽八重奏といったように,ときには管楽器のみによる室内楽も存在した。…
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