精選版 日本国語大辞典 「古典派音楽」の意味・読み・例文・類語
こてんは‐おんがく【古典派音楽】
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西洋音楽史における時代様式概念。広義には、バロックとロマン派の中間に位置する18世紀中期から19世紀初頭に至る時代をさす。この時期には、ヨーロッパ各地で数多くの作曲家が活躍していたとはいえ、狭義にはハイドンとモーツァルトが円熟期を迎える1780年ごろから、ベートーベンの中期が終わりに近づく1810年ごろまでの三大巨匠にのみ用いるべきであろう。
[中野博詞]
古代ローマの市民階級における最高の階級を示すラテン語classisの形容詞classicusに由来する「古典」あるいは「古典的」(ドイツ語でKlassik、英語でclassicism)のことばは、音楽においても多様な意味で用いられてきた。たとえば(1)時代を超えて永続的な価値をもつ模範的な傑作や作曲家、(2)古代ギリシア・ローマの芸術の特質、(3)「ロマン的」の反語としてなど、その用法はきわめて広い。音楽史における古典派の名称は、ほぼ同時代のドイツ文学におけるゲーテを中心とした古典主義との類比から名づけられた、と伝える。古典派という名称は、時代様式であるとともに、古典的という美的価値をも内包しているところから、音楽の完成度にしたがって、上述の区分が必要であると思われる。
[中野博詞]
通奏低音の技法のもとに多声的なポリフォニーと和音的なホモフォニーが共存したバロックと、ホモフォニーが中心となる古典派との間には、明白な様式の相違がある。古典派は、その形式原理の象徴となるソナタ形式の育成に伴って、交響曲や弦楽四重奏曲などの新たな曲種を確立する一方、バロックから受け継いだ曲種においても新鮮な息吹を吹き込む。強弱を鋭く対比させるバロックのディナミーク(音力法)に対して、古典派ではクレッシェンド(漸増)とディミヌエンド(漸減)を意識的に使用するようになる。楽器では、ピアノが登場してくるのも古典派の特色である。
しかし、バロック様式から古典派様式への変化は、けっして急激におこったのではなく、あくまでも漸次的に進行していったのである。同時に、当時の一般の作曲家たちは、単純・明快なホモフォニックな様式に専心するか、あるいはバロックの伝統を固執するかのいずれかであった。しかし、ハイドン、モーツァルト、ベートーベンの3人は、ホモフォニックな様式を中心としながらも、バロックの書法をも導入することにより、真に古典派とよぶにふさわしい、充実した各人の様式を生み出したのである。
[中野博詞]
古典派の特色となる普遍的性格と明確な主題に基づく均整のとれた形式美は、器楽曲に端的に表れている。古典派の器楽曲は、その楽器編成によって多様な曲種に分かれるが、楽章構成と形式に関しては、以下の4楽章構成を確立した交響曲に、多少の変化こそあれ、おおむね準じている。
第1楽章 急速なテンポのソナタ形式。
第2楽章 緩徐なテンポのリート形式など。
第3楽章 中庸なテンポのメヌエット、あるいは急速なテンポのスケルツォ。
第4楽章 急速なテンポのロンド形式やソナタ形式など。
独奏協奏曲はメヌエットを省略した3楽章構成。室内楽では、弦楽四重奏曲が4楽章構成を、ピアノ三重奏曲など鍵盤(けんばん)楽器が加わる曲種では3楽章構成が多く、その他の編成による曲種とソナタは、一般に3楽章構成か4楽章構成のいずれかをとる。また、古典派特有の社交的な音楽であるディベルティメントやセレナードは、一般に交響曲より多くの楽章を有する。
古典派においては、声楽曲も器楽曲に劣らず数多く作曲された。芸術歌曲を確立したのをはじめ、バロックから受け継いだ曲種においても、ミサ曲にソナタ形式を応用したり、オペラでソナタ形式による序曲を用いるとともに、アンサンブルや合唱を重視するなど、古典派独特の様式を浸透させた。
[中野博詞]
ハイドンが一生の大半を宮廷音楽家として過ごす一方、ヨーロッパ各地で公開演奏会と楽譜出版がしだいに活発化するように、古典派の音楽の担い手は王侯貴族に出発し、フランス革命を挟んで、徐々に一般市民へ移ってゆく。こうした変化は、宮廷音楽家として出発しながらも、やがて自由な音楽家として活躍したモーツァルトとベートーベンの生涯と作品に、そのまま反映されている。
[中野博詞]
他芸術の歴史との関連から、従来音楽史においても、古典派とロマン派は対立する時代様式とみなされてきた。しかし、古典派とロマン派の間には、バロックと古典派を明白に区分する通奏低音の消滅に相当する決定的な契機はみいだされない。さらに、古典派の曲種、形式、そして表現手段は、ロマン派の音楽家たちによって発展的に受け継がれているのである。したがって、ドイツの音楽学者ブルーメFriedrich Blume(1893―1975)が提唱したように、古典派とロマン派は、一つの時代様式として包括的にとらえられるべきであろう。
[中野博詞]
『R・G・ポーリィ著、藤江効子・村井範子訳『古典派の音楽』(1969・東海大学出版会)』
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出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
…そして18世紀中ごろから,歴史の振子は再び古典的均整と調和の方に振り戻される。音楽的には通奏低音の廃止と最上声を重視して他声部がそれを和声的に伴奏するホモフォニー様式の成立,交響曲,弦楽四重奏曲,ソナタなどその様式を基盤とする近代的な諸形式の誕生,そして社会的には絶対主義体制や教会的秩序の解体と,近代市民社会の成立に伴う音楽生活の変質,またそれと深くかかわりあう個性的表現の重視などを,古典派音楽の特徴と見ることができよう。音楽史における古典派という概念はハイドン,モーツァルト,ベートーベンによって代表されるウィーン古典派とほとんど同義に用いられるが,この古典派は突如出現したわけではなく,すでに18世紀前半から徐々に芽生えつつ,イタリア,フランス,ドイツで,前古典派と総称される一群の作曲家たちによって準備されたのである。…
※「古典派音楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報
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