室町時代の美術(読み)むろまちじだいのびじゅつ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

室町時代の美術
むろまちじだいのびじゅつ

南北朝時代 (1333~92) から室町幕府の滅亡 (1573) までの時代を対象とする美術。政治,社会の中心が京都に戻るとともに,美術の中心地としての京都の地位もますます向上したが,応仁の乱以後,幕府の支配力の低下に伴い美術は各地に拡散した。しかし江戸時代のように全国的規模にはいたっていない。おもな美術の需要者は武士階層と禅僧であった。すでに鎌倉時代に武士階層は新しく伝わった禅宗を積極的に庇護したが,室町時代になり各将軍,特に足利義満,義政らは一層厚く庇護した。義満の頃から禅宗は最盛期を迎え,それに伴って禅宗美術も興隆した。絵画においては,初期にはやまと絵系の画家が参加した形跡もあるが,すぐに禅僧画家が主流となり,徐々に禅僧と画家が分化する傾向が現れ,この動きを幕府の御用絵師制度が助長した。当時代の象徴的な美術様態は水墨画で,その発生は中国の宋元絵画の影響による。とりわけ山水画が発達した理由としては,禅宗の社会的普及,および五山文学における自然観があげられる。しかし後期になると,禅宗絵画も和様化の傾向を示すとともに,沈滞をきわめていたやまと絵が復興した。以上の室町絵画の流れを象徴するのは雪舟であり,狩野派の基礎を確立した元信が近世への転換を準備したのである。室町時代の美術,特に後期のそれは近世美術への萌芽であった点でも重視される。他の美術もほぼ絵画と似た経過を示した。

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