中国、北魏(ほくぎ)時代の道士。字(あざな)は輔真(ほしん)。上谷(河北省)の出身。405年ごろ謫仙(たくせん)の成公興と出会い、二人は華山、嵩山(すうざん)に入り、7年間の隠遁(いんとん)生活を送った。興と別れたのちも、謙之は修行を続けた。415年、太上老君(たいじょうろうくん)が降臨し、天師の位、および『雲中音誦(おんじゅ)新科之誡(かい)』20巻(現存の『老君音誦誡経』はその一部)を授け、五斗米道(ごとべいどう)(天師道)の改革を命じた。また、423年には、老君の玄孫で牧土宮主の李譜文(りふぶん)が来臨し、『録図真経』60余巻を授け、これによって北方泰平真君(北魏の皇帝)を輔佐(ほさ)することを命じた。翌424年、謙之は魏の都に進出し、漢人貴族崔浩(さいこう)と意気投合し、以後、二人は相助け合って、政界・宗教界に大活躍をする。ついに442年、時の皇帝、太武帝をして親しく道壇に至って符籙(ふろく)を受けさせることに成功し、ここに道教皇帝が誕生、道教は国家宗教の地位を獲得した。謙之の説く道教は新天師道と称される。その教法は、五斗米道の非王法的な面を排除するとともに、神仙思想や仏教を取り入れ、かつ儒教的な礼法主義を加えたものである。彼は全面的に国家に依存することによって、教団の維持を図った。
[尾崎正治 2018年5月21日]
『大淵忍爾著「道教の形成」(『中国文化叢書6 宗教』所収・1967・大修館書店)』
中国,北魏の道士。北魏政権と結合して道教を国家宗教にまで高めた。字は輔真。寇氏は上谷(現,北京市内)の豪族で,のち関中に移り,前秦,北魏に仕えた。兄の寇讃は北魏の州刺史。寇謙之は若くして天師道に志し,嵩山(すうざん)に入って修行した。やがて太上老君が現れて天師の位を授け,三張道教の革新を命じた。ついで老君の玄孫,牧土宮主から道書を授けられ,北方の太平真君を輔(たす)けて道教を宣布するよう命ぜられた。寇謙之はこうした宗教的体験をもとに北魏朝廷に接近し,太武帝の信臣崔浩を仲介として帝の尊崇を受けた。首都平城の東南に天師道場を起こし,また高大な静輪宮を営み道壇を築いた。太武帝は年号を太平真君と改め,その3年(442)には道壇に登って符籙を受けた。以後諸帝の即位にはこの儀式を例とした。寇謙之は太武帝の政治顧問としても活躍した。道教の尊崇は廃仏につながったが,寇謙之自身は徹底した廃仏には賛成でなかったらしい。世を去ったときは尸解仙(しかいせん)となったと伝えられる。
執筆者:谷川 道雄
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363~448
道教の大成者。馮翊(ひょうよく)万年(陝西(せんせい)省長安県)の人。北魏のとき河南の嵩山(すうざん)にこもって啓示を受け,旧来の天師道(五斗米道(ごとべいどう))を改革した。太武帝(たいぶてい)の尊信を受けて道教を国教とし,漢人官僚の崔浩(さいこう)と結んで廃仏を行った。
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… 漢民族の宗教としてのいわゆる道教が,みずからの教えを道教として意識し,対外的にも道教とよぶようになるのは,もちろん中国仏教のそれよりもはるかにおくれており,4世紀の初め,西晋末期に成立した道教の基礎理論書《抱朴子》の中においてもまだ〈道教〉という2字の成語は用いられていない。この言葉が道教の神学教理と密接に関連して確実な文献の上に見えてくるのは,北魏の歴史を記録した正史《魏書》においてであり,その〈釈老志〉に載せる5世紀の初め,北魏の明元帝の神瑞2年(415),嵩山(すうざん)の山頂に降臨したという道教の大神,太上老君の道士寇謙之(こうけんし)に告げた神勅の中においてである。〈吾れ(太上老君)故に来りて汝を観,汝に天師の位を授け,汝に雲中音誦新科の誡二十巻を賜う……汝は吾が新科を宣(の)べて道教を清め整え,三張の偽法の租米銭税および男女合気の術を除去せよ。…
※「寇謙之」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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