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中国、後漢(ごかん)末2世紀中ごろに四川(しせん)省蜀(しょく)におこった道教教団の天師道(てんしどう)の別名。現在では、この教団が魏(ぎ)の曹操(そうそう)によって公認された215年以前を五斗米道、以後を天師道(元(げん)以降は「正一(せいいつ)教」)とよぶ場合が多い。信者が五斗の米を納めたことからこの名があるが、五斗米という数は漢代の県令の五斗禄(ろく)に由来する。開祖は張陵(ちょうりょう)とされるが、実際には孫の張魯(ちょうろ)の代になって教団の組織は確立した。一般の信者は鬼卒(きそつ)とよばれ、24の「治」に分けて支配された。各治の支配には祭酒(さいしゅ)があたり、祭酒はまた、義舎(ぎしゃ)という一種の無料給食所を設け、米や肉を旅人に与えた。宗教活動の中心は治病であり、病気は過去の罪過の結果であるとされた。そこで祭酒は、病人を「静室」に入れて罪過を告白させ、病人の名と罪過を書いた紙片を天・地・水の神々(天官・地官・水官)に捧(ささ)げ、あるいは『老子道徳経』を唱えさせるなどして治病した。張魯かまたはその後継者の作とされる『老子想爾注(そうじちゅう)』は、『老子道徳経』を宗教的・倫理的に解釈した注釈であって、そこにはまた、老子を太上老君(たいじょうろうくん)として神格化し祀(まつ)った記録もみえる。五斗米道の特徴は、中国人の抱く理想郷の理念と共通している。したがって、それが天師道となって中国全土に広がると、農民の反乱に力を与えたり、上流貴族の間にも救世主出現を待望する夢を与えたりしたようである。しかし、この五斗米道が四川省内に実現したような神権政治的独立国家は、その後、二度と中国には現れなかった。
[アンナ・ザイデル]
2世紀末から3世紀はじめに中国の四川省から陝西省南部に広まった宗教。創始者といわれる張陵が信者に米5斗を出させたので,この名が生まれたというが,彼ら自身では新出正一明(盟)威之道と称したらしい。張陵の孫の張魯がその教法を大成し,司教や司祭にあたる治頭や祭酒などの教団組織を固めて独立の宗教王国を樹立したが,215年(建安20),曹操の軍門に下った。しかし,その教団は天師道の名で継続し,いわゆる道教の重要な柱となって発展する。その教えによれば,病気は犯した罪によるのであるから,病気を治すには,祭酒の指導のもとに静室で天・地・水の神々に罪をざんげ告白し,再び罪を犯さないとの誓約文を書く。また《老子五千文》を習い,無料宿泊所である義舎に米肉を寄進したり,道路や橋の修理に労働奉仕したりするような善行が,贖罪(しよくざい)につながるとされたので,信者は争ってその教えを奉じたという。
執筆者:川勝 義雄
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天師道ともいう。2世紀後半張陵(ちょうりょう)が始めた宗教結社。教法は祈祷による治病で,入門謝礼に5斗(わが国の約5升)の米をとった。孫の張魯(ちょうろ)は陝西(せんせい),四川に勢力を張り,子孫は竜虎山(江西省)に移って代々天師を称した。張角の太平道とともに,道教の源流をなす。
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…たまたまその年の秋に張角が病死し,有能な指導者を失ったために黄巾の主力軍は敗れたが,地方の黄巾軍や,また黄巾軍に呼応して立った各地の農民軍はなお健在であった。なかでも大きな勢力を誇ったのは河北の黒山軍と陝西から四川にかけての五斗米道(ごとべいどう)の軍で,これらの蜂起軍を鎮圧するためにはさらに20年の歳月を費さねばならなかった。 黄巾の主力軍が平定されると,外戚と宦官による相も変わらぬ権力争いが再開されたが,189年に外戚何進らによる宦官誅滅計画がもれて何進が宦官に殺されると,禁軍の将袁紹は2000余人の宦官をことごとく殺すという荒療治で宦官を一掃した。…
…中国,道教教団の源流の一つとなった五斗米道(ごとべいどう)の開祖。張道陵ともよばれる。…
…中国,五斗米道(ごとべいどう)の大成者。後漢末期,益州(四川省)長官の下で部隊長になり,漢中(陝西省南部)攻略に成功してここに独立した。…
※「五斗米道」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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