富士に立つ影(読み)フジニタツカゲ

デジタル大辞泉 「富士に立つ影」の意味・読み・例文・類語

ふじにたつかげ【富士に立つ影】

白井喬二長編小説。大正13年(1924)から昭和2年(1927)にかけて報知新聞連載単行本は、大正14年(1925)から昭和2年(1927)にかけて全8冊を刊行幕末から明治初頭を時代背景に、富士裾野への築城をめぐる築城家たちの確執運命を描く。

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精選版 日本国語大辞典 「富士に立つ影」の意味・読み・例文・類語

ふじにたつかげ【富士に立つ影】

  1. 小説。白井喬二作。大正一三~昭和二年(一九二四‐二七)発表。築城家、赤針流熊木家と賛四流佐藤家の親子三代七十余年にわたる築城をめぐる争いを描いた長編

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改訂新版 世界大百科事典 「富士に立つ影」の意味・わかりやすい解説

富士に立つ影 (ふじにたつかげ)

白井喬二の代表的長編小説。1924-27年《報知新聞》連載。〈裾野篇〉〈江戸篇〉〈主人公篇〉〈新闘篇〉〈神曲篇〉〈帰来篇〉〈運命篇〉〈孫代篇〉〈幕末篇〉〈明治篇〉に分かれている。1802年から73年にいたる時代を背景として,築城術赤針流の熊木家と賛四流の佐藤家の3代にわたる争いを描いた大河小説。富士の裾野の築城問答にからむ両家の対立を追って話は展開するが,とくに熊木伯典の子である公太郎の明朗型の人間造形に特色があり,同時代の中里介山《大菩薩峠》が輪廻流転に一つの発想を得ているのに比して,生成発展の姿を三代記の叙述に生かしており,著者の歴史観,人間観をうかがうことができる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「富士に立つ影」の意味・わかりやすい解説

富士に立つ影
ふじにたつかげ

白井喬二(しらいきょうじ)の長編小説。1924年(大正13)7月から27年(昭和2)七月『報知新聞』連載。25~27年、報知新聞出版部刊、全八巻。『裾野篇(すそのへん)』『江戸篇』『主人公篇』『新闘篇』『神曲篇』『帰来篇』『運命篇』『孫代篇』『幕末篇』『明治篇』よりなる。文化(ぶんか)年間(1804~18)、富士の裾野の調練城の設計をめぐり、築城家赤針(せきしん)流熊木伯典(くまきはくてん)と賛四(さんし)流佐藤菊太郎が争うが、伯典は奸策(かんさく)を用いて勝利を収める。宿敵の両家は、子孫の代にわたって、明治維新後まで対立する。中里介山の『大菩薩峠(だいぼさつとうげ)』と並ぶ大衆文学の代表的長編時代小説。伯典の子公太郎(きみたろう)の自然児的性格が魅力的である。

[酒井英行]

『『富士に立つ影』全七冊(富士見書房・時代小説文庫)』『興津要著『大衆文学の映像』(1967・桜楓社)』

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