日本大百科全書(ニッポニカ) 「寝宿」の意味・わかりやすい解説
寝宿
ねやど
結婚前の青年男女が集団で寝泊りする宿舎。泊り宿、遊び宿、寝屋、寝部屋なども同じ。男女別々が通例であるが、同宿のものもあった。専用の建物よりも民家の一室を気のあったツレ、ドシたちで借りる場合が多かった。この場合は集会所たる若者宿とは別になる。しかし娘組では娘宿がそのまま寝宿になる場合が普通であった。夕食後寝宿に集まり、翌朝起き抜けに帰宅するのが常だった。寝宿では夜なべも行われたが、遊びに終始してしまうことが少なくなかった。男女の寝宿どうしの交流は活発で、これにより恋愛、結婚に至る例も多くみられた。宿の主人夫婦たる宿親が宿子の指導や監督にあたったが、また若者たちの自治によって宿生活を運営するのが原則でもあった。寝宿の分布は東日本より西日本に、農山村より漁村に濃かったが、明治末年以後しだいに衰退した。
[竹田 旦]