狂言の曲名。太郎冠者狂言。大蔵,和泉両流にある。主人に謡(うたい)を所望(しよもう)された太郎冠者は,酒を飲まなければ声が出ないとか,妻の膝枕でなければ謡えないなどともったいをつける。主人は,酒をふるまい,自分の膝に寝かせて謡わせる。主人が太郎冠者の体を起こして謡わせると,声がかすれて出ない。しかし,何回も寝かせたり起こしたりするうちに冠者は取り違え,寝かせると声がかすれ,起こすと声が出,あげくに調子にのって立って舞いはじめる。以上の筋立ては両流同じだが,大蔵流では,気がついて逃げる冠者を主人が〈苦しうない。いま一つ謡え〉と追って入り,和泉流では〈おのれ,その声はどこから出た〉と叱って追い込む。登場は主人,太郎冠者の2人で,太郎冠者がシテ。太郎冠者が謡うのは,大蔵流では《放下僧》の〈小歌〉,和泉流では《海人(士)》の〈玉ノ段〉。《虎明(とらあきら)本》《狂言記》および鷺流の構想は《二千石(じせんせき)》《茫々頭(ぼうぼうがしら)》などと同工の抜け参り物。1929年,木村富子が歌舞伎舞踊に脚色して初代中村吉右衛門が演じたこともある。
執筆者:羽田 昶
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
狂言の曲名。太郎冠者(かじゃ)狂言。主人は、前夜その門前を通りすがりに聞いた太郎冠者の謡をまた聞きたいと、呼び出して所望する。冠者は、今後たびたび謡わせられては困ると考え、素面(しらふ)では謡えないと十分に酒を飲み、さらに妻の膝枕(ひざまくら)でなければ声が出ないなどと注文をつける。しかし、主人が自分の膝を貸すというので、結局その膝枕で謡うことになる。朗々と謡い始めた冠者の上体を、主人が試しに起こしてみると、声はかすれて出ない。下ろすと良い声になる。これを何度か繰り返すうち、冠者はうっかり取り違え、下ろすと声を出さず、起こすと良い声で謡い、ついには立って舞い始める。失敗に気づいて逃げる冠者を主人が追い込む。良い声と悪い声の使い分けと、それを取り違えていく演技の推移が見どころである。
[林 和利]
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