審尋 (しんじん)
審訊とも書く。民事訴訟で,当事者その他利害関係人に,書面または口頭で意見を陳述する機会を与える手続をいう。決定手続では,口頭弁論を開いてもよいが,開かなくてもよいことになっており,口頭弁論を開かずに書面で審理するときには,裁判所はその裁量によって書面審理を補充するために審尋を行うことができる(民事訴訟法87条2項)。審尋は,非公開の手続で当事者の一方だけに意見陳述の機会を与えてよい点で,公開の法廷で双方の当事者が対座して主張や立証活動を展開する口頭弁論と異なる。また,期日を定めて当事者を呼び出す必要がない点でも,口頭弁論と異なる。
審尋するかどうかは,本来は裁判所の自由裁量によるが,一定の場合には法律によって審尋することが義務づけられているし(たとえば,民事訴訟法50条2項,199条1項,223条2項,民事執行法102条,171条3項等),また,法が審尋することを禁止している場合もある(民事訴訟法386条1項,民事執行法145条2項)。
→審問
執筆者:井上 治典
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審尋【しんじん】
裁判所で口頭弁論の形式によらずに,当事者その他の者に個々的に,書面または口頭で陳述させること(民事訴訟法87条)。義務承継人の訴訟引受け(同50条)や,証言拒絶についての裁判(同199条),文書提出命令など(同223条)の際は審尋が用いられる。
→関連項目審問
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審尋
しんじん
Gehör; Anhörung
民事手続法上,書面または口頭で当事者その他の利害関係人に個々的に自由な方式で陳述の機会を与えること。決定,命令手続で口頭弁論を開かない場合には,裁判所の裁量で審尋できるのが通常であるが,常に審尋を必要とする場合があり,逆に審尋をしてはならない場合もある。また行政機関の行なう同様な行為を審尋ということがある (独占禁止法) 。
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世界大百科事典(旧版)内の審尋の言及
【審問】より
…民事訴訟で,受命裁判官または受託裁判官が当事者や証人その他の訴訟関係人に対して書面または口頭で陳述の機会を与える手続をいう(民事訴訟規則35条,78条)。裁判所が,[口頭弁論]を開かない場合に行う同様の手続は審尋(訊)と呼ばれる。審問および審尋は,当事者等の利害関係人に簡易迅速な陳述の機会を与え,裁判所ないし裁判官が口頭弁論のような厳格な方式によらずに利害関係人の主張を聞くための手続である。…
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