日本大百科全書(ニッポニカ) 「専制君主制」の意味・わかりやすい解説
専制君主制
せんせいくんしゅせい
「朕(ちん)は国家なり」(ルイ14世)ということばが象徴するように、もっぱら君主の意志を中心に政治が行われる政治形態。17、18世紀に成立した近代国家以前の政治は、ごく少数の例外(ギリシア、ローマの民主制など)を除き、おおむねこの形態をとった。アジア的専制とよばれるオリエントや中国の政治、ヨーロッパ諸国における絶対君主制などが典型例。専制君主制においては民主的な憲法・法律・統治組織が確立されていないから、そのような政治を「法の支配」に対する意味で「人の支配」とよぶ。
専制君主制を正当化する政治思想としては、君主の支配権は神意に基づくとする神権説(王権神授説)、家族に対して絶対的支配権をもつ家長の頂点に位置している君主は当然に絶対的権力をもつとする家父長制論(家族国家観)、領土・人民は君主の世襲財産とみる家産国家論などがある。イギリス・アメリカ・フランスなどの先進諸国に追い付くために国家の絶対的優位の思想のもとに近代化を進めたドイツの啓蒙(けいもう)君主制の場合も、そこにおいて人権や自由が十分に保障されていなかったので専制君主制の一種とみることができよう。また明治憲法下の日本も、形式的には立憲主義をとっていたが、神権説や家族国家観によって人権や自由が著しく制限されていたので、専制的な性格の強い君主制であったといえる。
[田中 浩]