尊円親王(読み)そんえんしんのう

改訂新版 世界大百科事典 「尊円親王」の意味・わかりやすい解説

尊円親王 (そんえんしんのう)
生没年:1298-1356(永仁6-正平11・延文1)

南北朝時代の能書家伏見天皇の第6皇子。名を守彦という。11歳で青蓮院に入り慈道親王について学び,1310年(延慶3)親王となり,名を尊彦と称し,11年(応長1)剃髪,名を尊円と改めた。同年第17世の青蓮院門主,31年(元弘1)には天台座主に補せられた。和歌,才芸に秀で,とくに書道は藤原行房,行尹について世尊寺流書風を学び,さらに上代の書風を参酌し独自の書風を作りあげた。これが青蓮院流または後にいう御家流で,後世に与えた影響は多大である。その書風は上代様の美しさに,手本公文書にふさわしい力強さと豊肥さを加え,わかりやすく丁寧に書くところに特色がある。また後光厳院学書のために《入木抄(じゆぼくしよう)》を著して献呈した。御物《結夏衆名単(けちげしゆうめいたん)》はその代表作。
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百科事典マイペディア 「尊円親王」の意味・わかりやすい解説

尊円親王【そんえんしんのう】

南北朝時代の書家。伏見天皇の第6皇子で俗名は尊彦,守彦。1310年親王となり,翌年剃髪,17世青蓮(しょうれん)院門跡となった。世尊寺流の書を学んだのち,小野道風藤原行成の書,さらに中国の書風をも取り入れて青蓮院流確立。代表的な筆跡に《大覚寺結夏衆僧名単》(1335年)がある。
→関連項目入木道

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「尊円親王」の意味・わかりやすい解説

尊円親王
そんえんしんのう

[生]永仁6(1298).8.1. 京都
[没]正平11=延文1(1356).9.23. 京都
伏見天皇の皇子。母は修理大夫俊衡の娘,播磨内侍三善衡子。初名は守彦のち尊彦。延慶3 (1310) 年親王宣下,翌応長1 (11) 年薙髪して名を尊円と改め,入道親王となり,青蓮院門主となった。元弘1 (31) 年天台座主となり,これを4度つとめ,光厳天皇,崇光天皇の護持僧となり,晩年には四天王寺別当となった。和歌に長じ,『千載集』『風雅集』に収められている。また特に書道に秀で,初め世尊寺行房,次いでその弟行尹に師事し,さらに小野道風,藤原行成の書風を参酌して一派を開いた。この書風は長く後世に伝わり,世に尊円流,青蓮院流粟田流と称され,その末流は御家流といわれている。書道の伝授書『入木抄』を著わし,また『門葉記』 (130巻) を編纂した。

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世界大百科事典(旧版)内の尊円親王の言及

【御家流】より

尊円親王を祖とする中・近世における日本書道の代表的書流。尊円は初め藤原行成を始祖とする世尊寺流を学んだが,さらに小野道風や宋の書風を加えて,流麗豊肥で親しみやすい一流を完成させた。…

【豪信】より

…図は似絵作品に共通する細線の引き重ねで面貌を描き,儀礼的な肖像画とは異なった写生風で軽やかな画像である。また宮内庁書陵部蔵《天皇影図巻》の末尾2体(花園,後醍醐)や《摂関影図巻》《大臣影図巻》は,巻末に付された尊円親王の筆と推定される奥書によれば豪信の制作であるという。尊円は花園院の異母弟に当たり,青蓮院門首や天台座主を務めたが,豪信は彼のかかわる法会にしばしば参列しており,また豪信の作画記録のいくつかに尊円が関与している。…

【拾玉集】より

慈円の家集で,鎌倉最末期から1346年(貞和2)にかけて青蓮院(しようれんいん)尊円親王が集成。同親王の命により慶運が編纂したともいう。…

【入木道】より

…そして中世以降,とりわけ近世に至り書において〈道〉という観念が生じてからは〈入木道〉と称し,例えば弘法大師を〈本朝入木道の祖〉というように,書道の代名詞として用いられた。中国に比べると日本には書法,書論の著作がごくわずかしかないが,最も内容が充実していると評価されるものに,尊円親王の《入木抄》がある。彼の書風は青蓮院流,御家流として中近世の書の主流をなし,各階級で用いられ,《入木抄》は日本の書にかかわる彼の理想を列記した貴重な著述である。…

※「尊円親王」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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