尿が出にくい(読み)にょうがでにくい(英語表記)Difficulty urinating

六訂版 家庭医学大全科 「尿が出にくい」の解説

尿が出にくい
にょうがでにくい
Difficulty urinating
(お年寄りの病気)

どのような状態か

 排尿メカニズム図6に示します。膀胱(ぼうこう)は、網の目状に走る排尿筋(はいにょうきん)に囲まれた弾力性のある中空臓器です。尿がたまり膀胱がふくらんでくると、その感覚が神経を通して脳に伝えられ、脳から排尿の許可が出ると、再び神経を介して排尿筋に伝えられ収縮します。これと連動して、神経を介して、膀胱の出口(男性の場合は尿道)を閉じる作用をしていた外尿道括約筋(がいにょうどうかつやくきん)がゆるむため、尿の出口が開いて排尿が行われます。

 つまり、排尿に関与する排尿筋と外尿道括約筋や、それらの連携を調整している神経が円滑にはたらかないと尿が出にくくなります。

 加齢病気、薬の副作用などによって排尿のメカニズムが崩れると、尿が出にくくなったり、逆にもれやすくなります。また、尿は膀胱から尿道を通って出るため、尿道を閉じてしまうような状態になると出にくくなります。

疑われる病気

 高齢者は一般に、排尿筋の収縮力が弱まるので、年齢とともに尿が出にくい傾向にあります。とくに男性では、前立腺が大きくなる前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)になると、余計に尿が出にくくなり、排尿の回数も増えます。

 また、過去に性病にかかったり、外傷を受けたことがあると、時に尿道が狭くなり(尿道狭窄(にょうどうきょうさく))、尿が出にくくなります。まれに、尿道に結石が詰まって出にくくなることもあります。

 女性ではまれに、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)で膀胱の出口が押さえられて、出にくくなることがあります。

 神経の病気としては、糖尿病による末梢神経炎(まっしょうしんけいえん)脳卒中(のうそっちゅう)後の後遺症、脳あるいは脊髄の腫瘍(がんなど)、脊椎二分症(せきついにぶんしょう)などさまざまなものがあります。

 薬が神経や排尿筋に作用して、尿が出にくくなることもあります。とくに、かぜ薬にその作用のあるものが多いので、高齢者が市販のかぜ薬をのむ時は注意が必要です。また、高齢者の便秘も、尿が出にくくなる原因になります。とくに、長期寝たきりの場合には注意しましょう。

家庭での対処のしかた

 いずれの場合も、専門医を受診して原因となっている病気を見つけ、適切な治療を受けなければなりません。

阿曽 佳郎


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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