中国,明の第17代最後の皇帝。在位1628-44年。姓名は朱由検。廟号は毅宗,荘烈帝ともいう。泰昌帝の第5子で,天啓帝の弟。1622年(天啓2)信王に封じられ,28年即位した。生れつき英明で,宦官魏忠賢ら前代の奸臣を誅殺し,名臣徐光啓を用いて内政の改革をはかった。しかし諸臣は前代以来の東林,非東林(東林党)の派閥を組み,内には党争が絶えず,外からは清の圧力がますます加わった。これに対処するために万暦の遼餉(りようしよう)に加えて勦餉(そうしよう),練餉など多額の田土付加税を新設したが,徴収は思うにまかせず軍費はかさむ一方であった。こうしたとき,帝は清の反間策に乗じられ,讒言(ざんげん)を信じて東北辺防衛の中心的人物袁崇煥を誅殺してしまった。以後辺防に人才がなくなり明の防衛力は急速に弱まった。崇禎帝の性格は猜疑(さいぎ)心が強く,その治政の間に50人の大臣を罷免したり,死刑にしたりしたが,辺防にもそれが災いしたのである。
明が清軍に対する防衛に苦しんでいたとき,国内では各地で飢饉がおこり,反乱が発生していた。とくに西北辺境では,明朝の駅伝削減により失業した駅夫や,食糧欠配に悩んだ兵士が,この反乱に加わり反乱の勢力は急速に拡大した。この反乱の中から李自成,張献忠らの力が台頭し,それぞれ大勢力を築きあげた。やがて李自成は西安を占領すると,ここを本拠として明朝討伐軍をおこしたが,明朝の将軍たちはつぎつぎ李自成に投降した。最後の軍を率いた李建泰も投降し,宦官が李自成に通じて城門を開けたので,1644年3月北京城はたちまち反乱軍に包囲された。帝は皇子を落ちのびさせ,皇女を斬り,皇后も自殺させると,諸臣が自分を誤らせた恨みとともに〈賊が朕(ちん)の屍(しかばね)を引き裂くにまかすとも,人民の一人も傷つくることなかれ〉という遺詔をのこして万歳山(景山)に登り,首をつって自殺した。
執筆者:谷口 規矩雄
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中国、明(みん)の第17代皇帝(在位1628~44)。姓名は朱由検。諡(おくりな)は荘烈愍(そうれつみん)皇帝。廟号(びょうごう)は毅宗(きそう)。14代皇帝万暦帝(ばんれきてい)の孫。15代泰昌帝(たいしょうてい)の第5子。16代天啓帝の弟。母は賢妃劉(りゅう)氏。1622年信王に封ぜられ、28年即位。帝は英明で声色を近づけず、衰運の明朝を復興する熱意を示し、前代の奸臣(かんしん)の魏忠賢(ぎちゅうけん)以下を殺し、弾圧されていた東林系の正義派官僚を釈放し、韓(かんこう)、劉鴻訓(りゅうこうくん)、銭龍錫(せんりゅうしゃく)などを入閣させた。また、キリスト教徒で水利や綿作など農政に通じた徐光啓を用いて財政再建を図った。施策にはみるべきものがあり、一時太平を期待させたが、なお内には万暦朝以来の党争の余派が残って官僚間に統一がなく、外には将卒ともに腐敗して軍事力も弱体化していた。当時、成長しつつあった満州(清(しん))の勢力には、なお十分に対応しえたが、戦費の膨張は万暦の遼餉(りょうしょう)に加えて、勦餉(そうしょう)、練餉(れんしょう)のいわゆる三餉となって納税負担者を苦しめた。明末無藝(むげい)の徴といわれるところである。加えて干魃(かんばつ)、水害など自然災害が相次ぎ、深刻な飢饉(ききん)となり、都市の暴動や農村の反乱が起こった。ことに陝西(せんせい)から起こった李自成(りじせい)の農民軍は軍規も厳格で、「貴賤(きせん)にかかわらず田を均(ひと)しくし、三年間の徴税を免じ、百姓を殺さぬ」という民生安定策が民心を集め、急速に成長して、ついに都北京(ペキン)を攻略した。帝は皇子を落ち延びさせ、皇女を斬(き)り、都の背後の煤山(ばいざん)(万歳山)で首をつった。1644年3月18日であった。
[川勝 守]
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1610~44(在位1627~44)
明の第17代皇帝。廟号は毅宗(きそう)。英邁であったが明末の積弊に勝てず,対清戦などの出費が多く,民衆の不満から内乱を招いた。李自成(りじせい)が首都に迫るに及んで自殺し,明は滅亡した。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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