巌谷一六(読み)イワヤイチロク

デジタル大辞泉 「巌谷一六」の意味・読み・例文・類語

いわや‐いちろく〔いはや‐〕【巌谷一六】

[1834~1905]書家近江おうみの人。本名、修。あざなは誠卿。小波さざなみの父。政治家として活躍する一方、能書家として知られ、独自の書風を示した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「巌谷一六」の意味・わかりやすい解説

巌谷一六
いわやいちろく
(1834―1905)

明治の政治家、書家。近江(おうみ)国(滋賀県)生まれ。名は修(しゅう)。一六、古梅、噏霞(きゅうか)、呑沢山人(どんたくさんじん)、金粟(きんぞく)道人などと号す。家は代々水口(みなくち)藩(滋賀県)に仕えた侍医であった。父の没後母と京都に出て、16歳のとき三浦東園について医術を学んだ。のち帰郷して藩の侍医となるが、明治維新後は徴士をはじめに内閣書記官元老院議官と役人生活を送った。さらに貴族院議員勅選され政治家として活躍した。漢学、絵画など学問、諸芸にも優れたが、書は初め中沢雪城に菱湖(りょうこ)流を学び、さらに趙子昂(ちょうすごう)(中国元(げん)の能書)を、また1880年(明治13)来朝した楊守敬(ようしゅけい)に六朝(りくちょう)書法を学び、一六独自の清新で新奇な書風を確立した。小説家の巌谷小波(さざなみ)は子息

[島谷弘幸]

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朝日日本歴史人物事典 「巌谷一六」の解説

巌谷一六

没年:明治38.7.12(1905)
生年天保5.2.8(1834.3.17)
明治時代の書家。幼名弁治,のちに修。号は一六,迂堂,古梅など。はじめ家業の近江(滋賀県)水口藩の侍医となる。幕末勤王家と交わり,明治維新後は上京し官吏となる。明治24(1891)年,勅選貴族院議員。一六の号は,在官中,1と6のつく休暇日に自宅で学書に励むことを習わしとしたためとされる。書ははじめ中沢雪城に学び,巻菱湖,趙子昂の風をよくしたが,13年に楊守敬が来日すると,日下部鳴鶴らと共に六朝の書を学ぶ機会を得,右肩下りの独特の書風を確立し,一家を成した。<参考文献>依田百川『一六巌谷先生伝』

(山内常正)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「巌谷一六」の意味・わかりやすい解説

巌谷一六
いわやいちろく

[生]天保5(1834).2. 近江
[没]1905.7.11. 東京
幕末,明治の書家。名は修,字は誠郷,号は一六。童話作家巌谷小波 (さざなみ) の父。水口藩 (近江) に仕えた藩医の家に生れ,初め医術を修めたが,藩儒中村栗園について漢学を学ぶ。内閣大書記官を経て貴族院議員をつとめた。書は若くして巧妙で,1880年に中国,清の楊守敬の来朝の際には,日下部鳴鶴と教えを受け,その六朝の書風を学んだ。書はその磊落な性格を反映し,新鮮で飄逸。碑文や法帖が多い。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「巌谷一六」の解説

巌谷一六 いわや-いちろく

1834-1905 明治時代の書家,官僚。
天保(てんぽう)5年2月1日生まれ。巌谷小波(さざなみ)の父。近江(おうみ)(滋賀県)水口(みなくち)藩医。維新後,内閣書記官,元老院議官,貴族院議員。書を中沢雪城,楊守敬(よう-しゅけい)にまなび,独自の一六流をつくりだした。明治38年7月11日死去。72歳。名は修(おさむ)。字(あざな)は誠卿。別号に迂堂,古梅,金粟道人など。
【格言など】書は心霊なり。心をもって書くにあらざれば文字は飛躍せず

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世界大百科事典(旧版)内の巌谷一六の言及

【巌谷小波】より

…明治・大正期の作家,児童文学者。本名季雄,初期別号山人(さざなみさんじん)。東京生れ。父の一六は貴族院議員で書家として著名。裕福な家庭に育ったが,医者への道を歩ませられることをきらい,周囲の反対の中で文学を志して進学を放棄し,1887年文学結社の硯友社(けんゆうしや)に入る。尾崎紅葉らと交わって小説を発表したが,少年少女のセンチメンタルな恋愛を描く作品が多く,この傾向は,児童文学に転ずることによって成功する。…

【書】より

…当時,和漢の書を極め,漢字に新しい境地を開いて注目される。菱湖は欧陽詢風の細楷をよくし,門下の中沢雪城からは明治時代の書家巌谷一六(いわやいちろく)(1835‐1905),西川春洞(1847‐1915)を出し,明治時代の書に与えた影響は大きい。 一方,江戸時代の一般庶民は上流階級には無関係に御家流万能であった。…

※「巌谷一六」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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