平均自由行程(読み)へいきんじゆうこうてい(英語表記)mean free path

  • へいきんじゆうこうてい〔ヘイキンジイウカウテイ〕

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

気体中の分子金属半導体内の伝導電子は,ほかの粒子衝突しながら運動をしていると考えられる。これらの粒子が衝突してから,次に衝突するまでに進む距離平均を平均自由行程という。それは粒子間の力と粒子の密度によって決り,粘性熱伝導拡散などの輸送現象を考えるのに便利な量である。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

気体内の分子は絶えず他の分子と衝突しながら空間を飛び回っている。1回の衝突から次の衝突までの間に進む距離を自由行程といい、その平均値を平均自由行程とよぶ。気体分子の速さは音速よりずっと大きいのに、匂(にお)いの広がる速さはそれよりはるかに遅い。こういった現象を説明するために1858年にドイツの物理学者クラウジウスが導入した概念である。気体の分子を半径rの球とみなしたとき、単位体積中にn個の分子を含む気体の平均自由行程が
  l=(1/)4πnr2
で与えられることを示したのはイギリスのマクスウェルである。lは1気圧の気体で10-7メートルの程度である。これの大小は、気体の粘性率、熱伝導度、拡散係数の大小に直接関係する。

 金属内の伝導電子を気体のように扱う場合には、電子に量子力学を適用しフェルミ‐ディラック統計を用いる必要があるので、古典的な考えをそのまま使うことはできないが、適当な拡張によって平均自由行程という考えを持ち込むことができる。金属の場合はやはり10-7メートルの程度である。

[小出昭一郎]

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化学辞典 第2版の解説

気体分子どうしが衝突して次の衝突までに進む距離の平均値.平均自由行程lは気体運動論により次式で与えられる.

ここで,nは単位体積中の気体分子数,σはその気体分子の衝突直径lは気体のnあるいは圧力によって大きくかわる.常温・常圧では 10-7 m 程度であるが,低圧では cm,m の程度になり,高真空の残留気体では km の程度にもなる.気体中の輸送現象(粘度熱伝導率拡散係数など)と密接な関係にある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典内の平均自由行程の言及

【平均自由行路】より

…気体,液体中の分子や金属中の自由電子が他の粒子と衝突しないで自由に動ける平均的な距離。平均自由行程ともいう。平均自由行路の考え方を最初に導入したのはドイツのR.クラウジウスである。…

※「平均自由行程」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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