朝日日本歴史人物事典 「平経正」の解説
平経正
生年:生年不詳
平安末期の武将。平経盛の長男。経俊,敦盛の兄。承安2(1172)年に兵衛佐,治承2(1178)年に丹後守,同3年に正四位下となり,但馬守を兼任する。平家一門では傍流だったが,一門と命運を共にして一の谷の戦で戦死した。琵琶の名手で,守覚法親王の『左記』によれば,幼少のころ,仁和寺の覚性入道親王の御所に祗候する児だった。琵琶に秀でた経正を愛でた御室は,名器「青山」を預け置く。経正は片時も「青山」を離さず,一門の都落ちに際して,それを仁和寺の守覚法親王に返上ののち,西海に赴いた。この経正と守覚法親王の仁和寺での別離の話は『平家物語』に詳しく,他にも17歳のときに宇佐八幡で「青山」を弾いた話や,源義仲追討の副将軍として北陸へ向かう途中,琵琶湖の竹生島で秘曲を奉納した話がみえる。和歌にもすぐれ,家集『経正朝臣集』がある。
(土谷恵)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報