建築物の設計、工事監理などを行う技術者のことで、建築士法(1950)によって定められた資格試験に合格し、免許を受けたものをいう。建築士には一級建築士と二級建築士および木造建築士がある。一級建築士はすべての建築物の設計、工事監理ができるが、二級建築士は、木造建築では高さが13メートル以下で延べ面積が1000平方メートル以下か階数が1のもの、非木造建築では延べ面積、高さ、軒高が一定以下の小規模建築などに限定されている。木造建築士は、階数が2以下で延べ面積が300平方メートル以下のものの設計・工事監理に限られている。また、建築の種類により資格試験の受験資格も異なる。一級建築士は国土交通大臣、二級建築士は都道府県知事が試験を実施し、それぞれ免許を交付する。
一般に、建築士でないと建築物の設計、工事監理は行えない。このことを業務独占という。この場合の設計とは、建築物の建築工事実施のために必要な図面および仕様書(設計図書という)を作成することであり、工事監理とは、工事を設計図書と照合し、それが設計図書どおりに実施されているかどうかを確認することをいう。このほかに建築士が行う業務としては、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査または鑑定、建築に関する法令、条例に基づく手続(確認申請など)の代理などがあげられる。建築士は、これらの業務を誠実に行い、建築物の質の向上に努めなければならないとされている。建築士が設計、工事監理などの業務を報酬を得て業として行う場合は、都道府県知事から建築士事務所の登録を受けなければならない。
建築士法に基づいた日本の建築士制度は、建築士の資格の対象者が設計、工事監理などを専業とするもののみならず、教員、官公吏、施工業者などのすべてを含んでいることに大きな特徴がある。とくに施工業者との兼業を認めている点が、施工業者と独立した職能として位置づけられている諸外国のアーキテクトarchitect(建築家)と異なる。建築士法が資格法であるといわれるのはこのためである。
2005年(平成17)に元一級建築士がマンションの耐震強度構造計算書を偽造した事件が大きく社会を揺るがしたことを発端に、建築基準法・建築士法改正という、建築士制度をめぐる大きな変化があった。主要な変更の視点としては、建築士の資質・能力向上と独占業務である建築設計・工事監理責任の明確化である。一定の条件を超える建築物については構造設計一級建築士、設備設計一級建築士などの高度な専門能力を有する建築士による構造設計および設備設計の法適合性チェックが義務付けられた。さらに、発注者と建築士事務所が、設計・工事監理契約締結前に、建築士事務所の管理建築士等による重要事項説明および書面による確認の義務付けが図られ、また、建築士事務所以外への再委託の禁止など、建築設計・工事監理業務契約当事者となる建築士事務所責任が強化された。
[秋山哲一]
〈建築士法〉(昭和25年(1950)法律第202号)によって定められる建築技術者で,1級建築士および2級建築士をいう。建築の設計,または工事の監理を担当する。建築士法は技術水準の確保と業務の責任制度を確立するために制定され,建築の設計・監理に従事する技術者の資格を規定している。設計・監理は建築業務の中の主要業務であるから,結局,建築士は建築技術者にとって必須の基礎的な資格となっている。1級建築士になろうとする者は,国土交通大臣が設計および工事監理に必要な知識および技能について毎年少なくとも1回行う1級建築士試験に合格し,国土交通大臣の免許を受け,国土交通省に備える1級建築士名簿に登録されなければならない。また2級建築士になろうとする者は,都道府県知事が毎年少なくとも1回行う2級建築士試験に合格し,その都道府県知事の免許を受け,都道府県に備える2級建築士名簿に登録されなければならない。1級建築士でなければできない設計,または工事監理は,(1)学校,病院,劇場,映画館,観覧場,公会堂,集会場,百貨店の用途に供する建築物で,延べ面積が500m2をこえるもの,(2)鉄筋コンクリート造,鉄骨造,石造,煉瓦造,コンクリートブロック造,無筋コンクリート造の建築物,またはその部分で,延べ面積が300m2,高さが13m,または軒の高さが9mをこえるもの,(3)延べ面積が1000m2をこえ,かつ階数が2以上の建築物である。1級建築士,または2級建築士でなければできない設計,または工事監理は,(1)鉄筋コンクリート造,鉄骨造,石造,煉瓦造,コンクリートブロック造,無筋コンクリート造の建築物,またはその部分で延べ面積が30m2をこえるもの,(2)延べ面積が100m2をこえ,または階数が3以上の建築物である。
建築士が他人の求めに応じて報酬を得て,設計や工事監理などを行うことを業としようとするときは,建築士事務所の登録を受けなければならない。
執筆者:伊藤 滋+忠末 裕美
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