構造設計(読み)こうぞうせっけい(その他表記)structural design

日本大百科全書(ニッポニカ) 「構造設計」の意味・わかりやすい解説

構造設計
こうぞうせっけい
structural design

住宅などの建築物の構造にかかわる設計をいう。建築物は竣工(しゅんこう)してからその使命を果たすまでの期間、建築物に働くと予想される荷重や外力(地震台風をも含む)に対して、構造的に安全に設計されていなければならない。こうした構造設計が万全でないと、いくら外観が美しく、また機能が優れていても、その建物は危険な存在になってしまう。この意味で、構造設計が建築物の設計の重要なかなめであり、安全性が構造設計の主要な目標に据えられるのである。

 一方、設計には経済性が付きまとうのが現実であるから、安全性の中身は、力学的合理性の追求過程で、経済性と手を結ぶことになる。したがって、社会が容認しうる妥当な安全率で建物を設計することが、構造設計技術者の責務である。

 具体的な設計は以下の手順で行われる。

(1)敷地地盤や荷重・外力(台風や地震力など)の条件を適切に評価したうえで、建物の機能と経済性を考慮して、構造体の形状・形式・材料や壁体・ブレース(筋かい)などのような耐震要素の配置、基礎構造の方式を力学的な面から選択する。

(2)ついで、荷重・外力に対する応力変形を求める構造解析を実施し、構造各部(部材や接合部など)の安全性をチェックする。

(3)最終的にはそれに基づいて施工できる図面を作成する。

 日本ではこの設計手順において、とりわけ地震によって生じる外力に対する配慮が重要である。とくに力の流れが明快で、投入した材料が効率よく抵抗する仕組みをつくる基本となる構造計画と、部材断面および接合ディテールの設定によって、適切な強度と十分な変形能力を構造体に付与するかどうかが、構造設計の適否を左右するといっても過言ではない。そのために、地震外力想定のもととなる地震動や地盤の性質、構造物の変形が弾性範囲のみならず塑性域に至る抵抗の仕方などについての多方面にわたる研究が蓄積され、より合理的・経済的設計の実現に寄与している。

 しかし、このように、いままでは主として地震という自然の物理的な現象に由来する問題だけに限定して、力学の土俵の上でのみ構造設計のあり方が論議されてきた。しかし、しだいに、個別の建物の構造安全性はもちろんであるが、都市機能を支える情報処理やインフラ施設の機能の維持までもねらいとする、より広い社会的次元にもたった構造設計思想の確立が望まれる段階に立ち至っている。

[小堀鐸二・金山弘雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の構造設計の言及

【建築設計】より

… 建築設計の実際の作業は,次の三つの専門分野に分けられる。すなわち意匠設計,構造設計,設備設計の三つの分野である。意匠設計とは,実用的要求および美的な要求に対応して,建築の形態を決定することであり,その問題の範囲は,敷地の条件や周辺の環境に対応する建物配置という全体の問題から,個々の部屋の構成,その内部の造作,装飾といった部分の問題にわたる。…

※「構造設計」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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