衝突する二つの物体あるいは粒子(系)の重心運動のエネルギーが衝突によって変化しない場合をいう。完全弾性衝突ということもあるが、弾性衝突でない衝突は一般には非弾性衝突とよばれ、衝突後二物体が合体する場合を完全非弾性衝突ということもある。二原子の衝突を例にとると、原子も核とその周りを運動する電子からできている多粒子系なので、電子の運動状態が変われば、原子が内部にもつエネルギーも変わることになる。ところが、電子の運動は量子力学に従い、それのとるエネルギーの値はとびとびの特定の値に限定される。このため、原子と原子の衝突の際にそれらがもつ運動エネルギーが小さいと、それを電子に与えて電子を励起する(エネルギーの低い運動から高い運動に変える)ことは不可能となるので、衝突によるエネルギーのやりとりは重心運動の運動エネルギーだけになり、衝突は弾性衝突となる。このように、内部構造をもたない粒子とか、内部構造があっても励起に高いエネルギーを要する系の場合に、弾性衝突がおこる。巨視的物体ではそのようなことはないから、衝突はつねに非弾性的であるが、材質の選び方によっては、かなり完全弾性衝突に近い衝突を実現させることができる。
[小出昭一郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
衝突の前後で物体または粒子の内部エネルギーが不変で,運動エネルギーが保存される衝突.それ以外の衝突を非弾性衝突という.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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